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第54話(下)―最終回

「晴斗が鐡と交戦してからどれくらい経った!?」
そう聞いたのは御堂。鼎は時間を見る。

「2時間以上は戦ってるぞ…」
「2時間!?おいおい体力オバケか晴斗はー…。持久戦ってか、泥試合化してきたな」


ずっと無言だった彩音がようやく口を開く。

「まさか相討ちになって、共倒れになんてならないよね」
「そんなこと言うなって。こればかりはどうなんのかわかんないからなー。あーっ!!」


人間の姿の鼎の相棒・対怪人用ブレードの鷹稜(たかかど)も呟いた。

「そろそろ決着つくかもしれません。恒暁(こうぎょう)の波動が変わりました」
「画面越しでもわかるのか、お前…」

鼎はちらっと鷹稜を見た。鷹稜もこの死闘の行方を見守る。



晴斗vs鐡は泥試合の様相を呈しているが、どちらも退かず拮抗。晴斗はせめて鐡を人間態にしたいと思っていた。
鐡は倒せなくてもいい、怪人態から人間態にさえ出来れば――


晴斗はぜいぜい言いながらも、再び鐡とつばぜり合いを繰り広げる。

「…なかなかやるじゃないか……」
鐡もかなり消耗している模様。2人は一気に決めることにしたらしい。それは相討ちだった。


鐡は怪人態から人間態へと戻る。そしてあの刀を構えた。
晴斗も構える。眼光が鋭い。2人はそれぞれ駆け出した。



「ちょ!?相討ちする気!?暁くん正気!?」
時任がハラハラしてる。
「あいつら決着つける気だ…」

宇崎もライブ映像を食い入るように見ている。



晴斗と鐡、2人は同時に斬りこんだ。もはや2人の残りの体力は僅かな状態。
一瞬、何が起きたかわからなかった。

数秒後、鐡が血を流し倒れた。それから僅か数秒後、晴斗も倒れる。
晴斗も流血していたが、鐡よりは傷は浅いようにも見える。


共倒れになったのか?


晴斗はなんとか立ち上がる。鐡も立ち上がろうとするが、傷は深いようだ。

「俺の負けだ、暁。楽しかったぜ」
鐡は満足げに笑っている。


採石場には鐡の部下の杞亜羅(きあら)もいた。
「鐡様!逝かないで下さい!」
「傷は見かけほど大したことないぞ。杞亜羅、肩貸せ。異空間に帰るぞ」

「帰る?」
「お前、異空間の立て直しをしたいんだろ。考えが変わった、異空間に戻る。立て直すぞ。
元老院に荒らされたんだ、元に戻さないとならねぇだろうが…」

杞亜羅は泣きそう。
「鐡様ぁ…」
「暁、しばらくお前らとは休戦だ。双方被害が尋常じゃないだろうに。
いつになるかわからないが…また来るよ。何、お忍びで人間界に来るかもしれないが、何もしない」

鐡は少しだけ言い方が柔らかくなっている。



鐡は再び指を鳴らした。晴斗は本部のグラウンドに転送されていた。

本部に戻ってきたんだ。


恒暁は人間の姿になったが、傷だらけ。
「恒暁!おい…ぼろぼろじゃないかよ…」
「お前のために頑張りすぎたわ。ブレードの姿に戻るから、俺の修理よろしく。晴斗、お前も手当て受けろよ。お前こそぼろぼろじゃないか…」

「恒暁…」
恒暁はそう言うと、元のブレードの姿に戻った。





数ヶ月後――


特務機関ゼルフェノアは、これまでの戦闘による被害の立て直しを進めることに。
鐡の休戦宣言により、平和は訪れたが怪人の残党がまだ出ている。

隊員達は残党を倒しつつ、再建を進めているような感じだ。



この数ヶ月間でゼルフェノア隊員にも変化が。


「いちか、ほら行くよ!ゼノクにいるお兄さんに会いに行くんでしょ?」

彩音と時任はいちかの兄・眞(まこと)に会いに行っていた。眞はしばらくゼノクスーツ姿だったが、回復してきたため久しぶりに素顔で妹のいちかと再会。


「兄貴ーっ!会いたかったよー!」
「いちか、泣くなよ。戦いがめちゃくちゃ大変だったって聞いてさ…」
「あたしは兄貴の顔が見れただけで嬉しいよー。兄貴の素顔見たの、3年ぶり?それ以上になるのか…」

「いちか、一時的だけどゼノクから出られる許可が出たよ。治療はまだ終わってないんだけどね。甘えてもいいんだよ?」
「兄貴、その日は一緒にどこかへ出かけようよ。ねぇ、いいでしょ?」

いちかは嬉しそう。



ゼノク・司令室。西澤達3人は通常通り。

「西澤、長官がまた何か作ってますよ…」
「南、ほっときなさいよ。最近になってようやく蔦沼長官の扱い方がわかってきたわ…」

「私達、ずっと振り回されてますからねー…。ははは…」
南が引き笑いしてる。長官に振り回される苦労人2人の受難はまだ続く?



鳶旺(えんおう)決戦で負傷した、北川元司令はあれから退院。たまに暁家に顔を出すように。


「陽一、久しぶり」
「北川さんじゃないですか。怪我治ったのか?」

「まだ完治してないが…。君の息子、かなり成長したな〜。精神的にさ。
紀柳院のこと、気になっているのかい。彼女は俺が見守っているから安心しなって。あと…パートナーが出来たみたいだから安泰じゃないか?」


パートナー?


「御堂和希だよ。紀柳院の先輩だ。なんかいい感じになってたみたいでねー。御堂は意外と恋にはシャイみたいだし、2人の恋を密かに応援してるのさ」

「北川、ストーカーだけはやめとけよ」



異空間では鐡が杞亜羅と共に立て直してる。

「杞亜羅、なんでお前そんなにも俺に忠誠心あんの?。狭山みたいに自由にやればいいのに」
「忠誠というかなんというか…。なんでしょうかね…」

杞亜羅はまだこの感情をわかってない。



本部でも変化が。解析班の朝倉と矢神の凸凹コンビはしれっとカップルに。見た感じ、至って通常通りなのでなんら変わってないのだが。



御堂は分隊長クラスから隊長クラスへと昇格。そんな御堂は司令室へと呼ばれていた。


「御堂、鼎に会いたいか?」
「会いたいよ。あいつはどこにいる?」

「鼎〜、出てきてもいいよ〜」
宇崎の掛け声に鼎はおずおずと出てきた。


ゼルフェノアの白い詰襟の制服には変わりないが、鼎の制服は若干デザインが変わっていた。


鼎の制服のデザイン…ちょっと変わった!?印象変わりすぎだろ!?


「和希、鼎は今日から俺の『司令補佐』として動いてもらうことにしたんだ。
今まで本部指揮系統は俺ひとりだったし。鼎は組織にいたいから、居場所を作ったわけ」
「司令補佐って、階級高くない!?」

御堂、かなりの驚きのリアクション。


「階級?気にすんな。本部では『初』の女性司令補佐だ。便宜上の役職だから、鼎の階級は隊員となんら変わらないぞ。
彼女は戦えなくなったが、観察力と洞察力は優れているからね。だから補佐にしたの。司令室ならいつでも隊員に会えるだろう?和希くん」

宇崎はニヤニヤしてる。


「からかっているのか、室長」
「お前ら、付き合っているんだろ?前々から知ってたけどさ」


御堂、周りに知られて頭が真っ白になる。鼎は冷静に言った。


「別に隠してはいないだろうに。組織公認みたいなもんだろうが」

「そうそう。ゼルフェノアはどういうわけか、カップルが出来やすいんだよね〜。吊り橋効果ってやつ?
和希と鼎はそうじゃないみたいだが。和希は鼎が入った当初からずっと見ていたからねぇ〜」



――某日。とあるカフェのテラス席。晴斗は高校ライフを再開し、テラス席で勉強中。遅れたぶん、勉強を頑張っている。

学校をずっと(戦闘で)サボっていたから頑張らないと…。遅れを取り戻さないとなー…。
鼎さん達、元気かなぁ…。


晴斗は進路に悩んでいた。

高校卒業後、ゼルフェノアに正式に入るか大学に進むかで。


そんな中、通りに白いゼルフェノアの制服がちらほらと見えた。


――ゼルフェノア?ん?あれってまさか…。

晴斗は思わずその白い制服の中に見慣れないデザインの制服を見る。その制服の主は白いベネチアンマスクの女性。


「鼎さん!?鼎さんだよね!?」
晴斗は思わず声を掛けた。


声を掛けられた鼎は立ち止まる。

「晴斗…久しぶりだな」
鼎の声が優しい。こんなにも優しかったっけ?数ヶ月ぶりだからかなー…。


「その制服どうしたの?…てか、御堂さんと彩音さんも久しぶりだね!」

「晴斗、勉強頑張ってるか〜?」
御堂はだるそう。
「頑張ってるよ。まだ進路は決めてないけど…ゼルフェノアに正式に入りたいかもしれない…」


「暁くん!あたしのこと、忘れてないかい?」
時任がひょこっと出てきた。
「時任さん、なんか変わったね…」

晴斗はたじたじ。よく見ると桐谷もしれっといるではないか。



鼎は市民から注目されているようだった。

「鼎さんの周りに人だかりが…。御堂さん、どういうこと?」
「晴斗、お前知らないのか?鼎は本部『初』の女性司令補佐になったんだよ。だから俺らがついてるわけ。野次馬対策な。
鼎は戦えない身体だし、何かあったら困るだろうが」

「初の女性司令補佐な上に仮面の隊員が昇格したから、なんか世間から注目されてるみたいでさ〜。
きりゅさん、人多いところ苦手だからあたしらがガードしてんの」
時任が説明してる。


「なんでわざわざ街中に来たのさ…」
晴斗が何気なく呟いた。
「気分転換だが?」
鼎はピシャリと呟いた。


「人慣れしないと今後困るだろう?私も克服しようとしてるんだよ。
仮面の理由を知って欲しくて、顔の大火傷の跡のことは世間に公表したけどな」


公表って…相当勇気いるんじゃないの!?
事の発端となった、あの事件のことは触れていないみたいだが…。


「鼎、早く行こう。司令補佐と言っても、実際は隊員となんら変わらないんだからね。
室長も制服デザインそのままにしとけばいいのにさ…」

彩音まで呟いてる。



晴斗は鼎一行を見送った。


鼎さん、大変そうだ。俺も早く力になりたい。
力になって…何したいのかな。今は平和だけど怪人の残党がいるのは知ってる。


ゼルフェノアは人知れず、まだ戦っている。残党がなくなるその日まで。





―完―


第54話(上)―最終回

鐡決戦当日――


鐡はわざわざ本部に出向き、晴斗を呼び出した。晴斗の相棒の対怪人用ブレード・恒暁(こうぎょう)は元のブレードの姿。

「ここで戦うのは好きじゃねぇ。場所を変えんぞ」
鐡がそう切り出すと、指をパチンと鳴らした。すると晴斗と鐡の2人は採石場に瞬間移動された。



「ここなら好きなように暴れられるだろ?暁晴斗くん」
「ああそうだな」
晴斗はこれまで以上にないくらい、真剣な表情。

「じゃ、始めますか」


鐡は刀身が紫色の刀を出現させ、いきなり切りかかる。晴斗は咄嗟に避け、こちらも攻撃体勢に。

「身のこなしがずいぶんと素早くなったな。でもまだ序盤だぜ」
鐡は楽しそうに晴斗と刃を交えてる。



約3週間前――
晴斗にゼノクにいる御堂から連絡が入る。


「晴斗、よく聞け」
「御堂さんどうしたの?」

「鼎の手術は成功した。お前ずーっと気になっていただろうが。
お前はお前がやれることをしな。鐡との決着控えてんだろ?鼎の心配はすんな。
あいつはもう戦えない身体になっちまったが、室長が鼎の居場所を作るから安心しろ。…ま、ゼルフェノア自体があいつの居場所なんだけどな…」


「鼎さん…良かった…」
晴斗は安堵の声を出す。
「鐡との決着、きっちりつけてこい」


通話が切れた。鼎さんのことはずっと引っ掛かっていた。
鳶旺(えんおう)との決戦後、ゼノク隣接の組織直属病院に鼎さんが搬送されてから、御堂さんと彩音さんから連絡が全然入らなくなっていた。俺はもやもやと不安に押し潰されそうになっていた。

室長からある程度、情報は入っていたから鼎さんがどうなっているかはそこそこ聞いてはいたが…。手術レベルだったなんて…。



晴斗は持ち前の身体能力でひたすら避けるが、鐡が煽ってくる。

「逃げてんじゃねぇよ」
晴斗には考えがあった。それは持久戦に持ち込むことだった。序盤はブレードを発動させず、肉弾戦メインにして戦う。
これは晴斗の相棒、恒暁が「お前には持久戦向いてるからこれで行けば?」…とアドバイスされたのもある。晴斗はそれを参考にした。


晴斗は肉弾戦メインで鐡と殴り合い、蹴り飛ばす。鐡はニヤニヤしながらこちらも殴り返す。

「腕上がってんじゃんか」
鐡は褒めてるのか?晴斗は一気に鐡を突き飛ばす。彼は恒暁との稽古により、肉弾戦の実力も向上。


しばらくの間、2人は肉弾戦メインでただひたすら戦ってる状況。



ゼノク隣接・組織直属病院。

鼎は組織の端末でその様子をライブ映像で見ていた。側には彩音と御堂、人間の姿の鷹稜(たかかど)もいる。


「この戦い、わからなくなってきたな…」

鼎は晴斗の身を案じてる。まだ序盤だが、相手が相手だし、読めない展開なので見ている方もハラハラしている。


「晴斗のやつ、いつの間にあんなに腕上げたんだ?キレキレじゃないか」

御堂は晴斗の肉弾戦のキレに着目してる。彩音も自分の端末で戦闘を見ているが、無言。
鷹稜は鼎の端末を覗きこみながら呟いた。

「恒暁が稽古つけたのでしょうか」
「鷹稜、少しだけ黙っててくれないか?」

「あ…申し訳ないです」
鷹稜は鼎に言われてしゅんとしてる。



本部でも司令室でパブリックビューイング状態に。


「こら!ここはスポーツバーじゃないんだぞ!司令室から出ろーっ!!」
宇崎はメインモニターで戦闘を見ている時任達に言ったが、ほとんど効き目なし。

「室長なんなんすか。こういう時だけ司令官ズラっすか。メインモニターの独り占めはさせないよ!」


…俺、司令官なんだけど…。本部司令だよ?


「時任…なんでわかったの…」
「誰だってわかるってば。顔に出てるもの」



ゼノク・司令室。蔦沼・西澤・南もメインモニターでこの戦いを見守っている。


「長官。スペアの戦闘兼用義手、ようやく2つとも来ましたが、最大出力にして両方パーにするのは勘弁して下さいよ〜?あれ、捨て身すぎますから危険だっつーのに」

西澤がジリジリと攻める。


「もう無茶はしないから、しないって」


「暁、持久戦に持ち込む気かな…。さっきからずっと肉弾戦メインだ」
蔦沼の秘書兼SP、世話役の南は気づいたらしい。

「相手が曲者だから様子見兼ねてるんだろうね。暁は1vs1(サシ)で何回か鐡と戦ってはいるけど、鐡の威力は謎だからな〜」
「長官、呑気すぎますよ」

西澤に蔦沼はさらっと注意された。



晴斗は再びブレードを手にし、叩きつけるように斬り込むが鐡がそれを阻止→2人はつばぜり合いに。
晴斗は隙を突いて一気に行くが、鐡に見抜かれる。


「本気出せよ、暁。手加減なしだぜ?俺も本気出すからな」
鐡は怪人態に変貌。ゼルフェノアは初めて鐡怪人態を目撃することに。それは鳶旺怪人態とは違う意味での威圧感が。


「怖じけつくなよな」
怪人態でも鐡のあの話し方はそのまんま。

晴斗はブレードをようやく発動→猛ダッシュで助走をつけ跳躍→斬り込むが相手は怪人態。手応えがない。

鐡は一気に殴り、突き飛ばし、晴斗を一方的に攻撃してる。「手加減なし」なので殺す勢いで攻撃してる。


晴斗はギリギリ攻撃を交わしていた。体力の消耗が激しい。つーか、鐡めちゃくちゃ強い!!
人間態でもあの強さなだけに、怪人態ともなると…。


晴斗はかなり不利な状況に追い込まれていた。

発動がほとんど効かないのは鳶旺戦と似ているが、鐡は鳶旺とは違った意味で怖いというか…。



「なんか暁くん、詰んでない?発動効いてないし…どうすんだろ」

時任の指摘に宇崎はモニター越しの晴斗を見た。鐡怪人態も桁違いに強いのか…。
この戦いは2人の戦いだ。誰も干渉出来ない。2人は戦闘前にあるやり取りをしていた。


・これは2人の戦い。他人の干渉一切禁止
・勝負に制限時間はない
・片方が自ら負けを認めたら終了、倒されても負けとなる
・手加減一切なし


「晴斗なら勝機はありそうだけどな…」
「まだわからないっすよ。勝負はこれからだよ」

時任がなんか予想屋みたいになってきた…。お前、そんなキャラだっけ?



晴斗vs鐡はだんだん楽しくなってきたのか、本気で戦っている。激しい攻撃の応酬。
ブレードの発動が切れても晴斗は気にせずに斬り合い、攻撃を畳み掛けている。


鐡も少なからずダメージを受け始めていた。


「スタミナ切れか?暁…」

晴斗はふっと笑った。
「まだ戦えるよ!」
「そう来ないとね〜。あんたらしくないわ」


2人の攻撃の応酬はさらに激化。晴斗は息を切らしながらもひたすら攻撃を繰り返す。



鼎の病室。鼎は祈るような気持ちでライブ映像を見ていた。

「晴斗…死ぬなよ…!生きて帰ってこい…」
鼎も死にかけただけに、気が気じゃないようだ。鐡も明らかにラスボスクラス。

今まで鐡は人間態だったからわからなかったが、怪人態も相当強い。人間態であのスペックなのに、怪人態ともなると…。


御堂は鼎を気遣う。


「鼎、お前…体調大丈夫か?術後なんだぞ?とにかくこの戦いは見守るしかないな。
そうだ。室長が鼎のために居場所を作ったって」
「居場所?」

「戦えなくても、俺達と一緒にいるような…そんな居場所をわざわざ作ったみたいだぞ。だから俺達とはいつも通りだってよ。基本的にな」
「本当なのか?」

「気になるなら室長に確認してみなよ。今はやめておけ、退院後な。とにかく鼎は回復させるのが先だろ」

「和希…」


鼎は和希を見た。心なしか、御堂は優しくなっていた。
御堂は鼎の仮面の頬にそっと触れる。


「仮面触られるの、嫌か?」

「和希は嫌じゃないよ。視界が狭いから最初わからなかったが…。頬に触れたのか」
「お前…仮面は身体の一部だろ。鼎、いつかまた素顔を見せてくれよ。嫌なら無理しなくてもいい」

「和希…この感情がなんなのかわからないんだ…」
「悪い。混乱させてしまった」


御堂は鼎の仮面から手にそっと触れた。鼎は火傷の跡を隠すため、黒い薄手の手袋を履いているが…。

「和希…気持ちはわかるが触りすぎだぞ」
「気を悪くしたか…悪い。悪気はないんだ」


鼎と御堂は互いに気持ちが通じているらしい。御堂は不器用すぎるだけで。



晴斗は再びブレードを発動。
「どりゃあああああ!!」

ブレードの威力がさっきよりも上がっている。晴斗の消耗は激しいが、2人はプライドを賭けて戦っている。

「なんだ、まだ行けるじゃねぇか。さすがは天然タフ野郎」
鐡は褒めてるのか、煽っているのか。どっちだ。



「いっけー!!暁行けーっ!!」


本部司令室はパブリックビューイング状態に。スポーツじゃないんだぞ…これ…。命懸けの戦いなんだが、なんなんだ。この盛り上がりは…。

相手が相手なだけに、お祭り状態になってしまってる。


「お前ら、スポーツ感覚で戦闘観戦すんな!!」
「室長だって楽しんでる癖に〜」

時任は洞察力が高いのか、すぐに見抜いてしまう。



鐡も本気なので容赦ない攻撃を繰り出す。晴斗は地面に叩きつけられた。
鐡はジリジリと迫る。


「そろそろ負けを認めろよ」

「やだ」
「やっぱりしぶといな〜。暁は。粘り強いというかよ」

「ごちゃごちゃうっさいな!!」
晴斗にスイッチが入ったっぽい。ブレードもシンクロしたのか、光の強さが増している。


晴斗は対怪人用ブレード・恒暁の声を聞いた気がした。「行け」「躊躇うな」と。





第54話(下)へ続く。

無題


話題:おはようございます。
昨日の拍手17個ありがとうございます。なんか来るな来るだろなーと思ったら来やがった。生理が。
朝方生理痛で最悪で。

命の母ホワイト飲んだら少しはマシになりました。異常に腹が減る。異常な眠気はまあまあなくなったけど、今度はそっちかよ!



自己満小説、ようやく最終回に行けるか?54話で終われるか…。
晴斗が鐡との決着で終わらせたいってのは最初からあった。


鐡は天の邪鬼みたいなキャラになってしまった〜。晴斗のメンター的な一面もあるし。読めないやつ的な。

鐡は敵なんだけど、目的のためなら敵対している相手とも呉越同舟しても構わない…的な。


終盤に唐突に出たゼノク医療チームの天才外科医・加賀屋敷は設定カテゴリーで詳細設定書かないとダメなやつかも。
過去の鼎に関わっていた人物になのだが、最終回は鐡との決着なのでたぶん尺足りない…。


本編の補足的なものは基本1話完結の番外編・過去編・後日談でって感じ?


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