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番外編 司令補佐(上)

これは本編の後日談。決戦の末に平和が戻ったとはいえ、まだ怪人の残党が蔓延っている。



本部・司令室――


「鼎、慣れてきたか?司令補佐」

そう気軽に声を掛けてきたのは宇崎。見た目は白衣を羽織っているため、司令官には見えないがこう見えても本部司令。研究者も兼任しているため、こんな格好。


「なんとか慣れてはきたよ。…室長、なんで私を司令補佐にしたんだ?」

「鼎の洞察力と観察力…指揮に向いてるんじゃないかな〜って、前々から長官達が話しててね。
お前は研究助手に向いてないのはわかっているはず。だから隊員との接触が多い司令補佐にしたわけ。長官は鼎を本部司令候補にしているみたいだよ」


司令…候補?


鼎はまだ何がなんだかわかっていない。司令候補?この司令補佐は便宜上の役職ではなかったか?

本部初の女性司令補佐となった鼎は世間からも話題になっていた。仮面の女性隊員の司令補佐。
そのほとぼりが冷めたため、ようやく落ち着けた感じ。


「室長、まさかこの制服のデザイン…『司令官』を意識したものか?」
鼎は制服を見る。白地に詰襟は変わらないが、彼女の制服は若干デザインが変わった。洗練されたデザインになっている。


「そうだよ。ゼルフェノアのイメージカラーは白だろ?だから白地には変わりないが、司令っぽく控えめに装飾がついたのよ」
「白地のデザイン違いの制服…長官みたいだな」

「それ、長官がデザイナーに考案したんだよ。鼎に合うように。仮面との兼ね合いもあるからね」
「まさか室長は私に丸投げして研究に没頭…しないよな…。まだ不慣れなんだから色々と教えてくれ」

「丸投げなんて…し、しないよ。するわけないだろうが」


宇崎は鼎に丸投げしようとしていたらしいが撃沈。


「鼎、あれから体調どうなの?まさか加賀屋敷と面識があったなんてな〜」

「室長はゼノク医療チームについて何か知ってるのか!?組織最高峰の医療チームなんだろ!?…私は加賀屋敷しか知らない…。彼に救われたから。2回救われるのは想定外だったが」


「彼ら4人は長官によって、スカウトされた・拾われたりした人材ってことしかわからないんだよね。
長官はある筋からどうとかって言ってたけど」


「ある筋」って…なんなんだ?


鼎はゼルフェノア最高峰の謎の医療チーム・ゼノク医療チームがかなり気になるように。



ある日。鼎は司令補佐として、上層部のリモート会議に参加することに。ここで鼎は指揮系統の裏側を垣間見ることに。


「紀柳院、緊張してる?」
そう優しく語り掛けたのは蔦沼。

「は、はい…かなり緊張しています…」
鼎はずっとうつむいたまま。


「今日の会議は気楽なもんだから気にしないで。組織も、働き方改革で女性役職者を増やそうとしてるのね。
本部の女性役職者はは朝倉しかいなかったから、さすがにマズイな〜ということで、紀柳院を司令補佐に抜擢したんだが…そろそろ慣れたかな?」
「ま、まぁ…そこそこ」

「紀柳院は身体のこともあるから無理せずやればいい。
本部のバックアップも以前よりも強靭にしてあるから、些細なことでも困ったらすぐに言ってくれ。迅速に対応するよ」
「ありがとうございます」

鼎はようやく顔を上げた。まだ緊張しているのか、ぎこちない。


会議という割には雑談会のような雰囲気になっている。本部・支部・ゼノクの新体制の顔合わせという、意味合いもあるせいか?

よく見るとメンバーには鼎と同年代の隊員もちらほらいる。どうやら新体制のメンバーらしい。



会議は和やかに進んでいった。

「残党はまだいるから、抜かりなく殲滅だ。以前よりは怪人の出現頻度は減ったが、まだ油断出来ないからな」
そう言ったのは支部の小田原司令。

「小田原司令…それは皆わかっているってば」
「宇崎、お前軽すぎだ」


「紀柳院、『司令補佐』と呼ばれるの…違和感ありあり…だよね…」
蔦沼がかなり慎重に聞いている。

「『紀柳院司令補佐』と呼ばれるのはどうも…。長官、私が本部司令候補というのは本当なのか?」
「あれ?宇崎から聞いたのか…。宇崎、それ言うの早すぎだよ」



結局、ゼノク医療チームについて聞けなかった。
しかし…「紀柳院司令補佐」という肩書きはどうも慣れない。こそばがゆいというか、なんというか…。



「ふーん。『肩書きに慣れない』…か。鼎らしい悩みだな。
俺が隊員達に伝えておくから気にすんな。呼び方はいつも通りでいいんだろ?」

御堂は鼎の相談を受けていた。鼎からしたら慣れないこともあり、肩肘張っているようだ。

「鼎、肩ガチガチだぞ。ほら…」
御堂は優しく背中をさすってあげている。鼎は不思議と緊張がほどけたようだった。


「和希…ありがとう。緊張が解けたよ」
「それじゃあ俺は戻るからな。いつでも相談なりなんなりしろよ。彩音や室長もいるんだ、もっと俺達を頼れよ」

御堂はぶっきらぼうに言うと司令室を出た。鼎はなんとなく左腕を触る。御堂が触れた場所だ。

「和希…」
鼎は呟いた。


宇崎は2人の様子を遠目に見ていた。不器用だけど、和希は鼎の心の支えになっている。
御堂は口こそは悪いが、いいとこあるんだよなぁ。



本部・休憩所。御堂は彩音と話してる。


「御堂さん、なんか大変そうだね…」
彩音が気づかう。

「俺なんてまだマシだ。鼎は肩書きの重圧に押し潰されそうになってる…。
あいつ…そのうちポッキリ折れてしまいそうで…」

御堂は複雑そうな表情。


あの御堂さんが思い詰めてる…。相当だ…。


「御堂さん、鼎は乗り切れると思うから…。でも私も不安なんだよねー…」
「俺達がなんとかしてあいつを支えるしかないだろ」



本部・司令室。


「鼎は司令室の機器は扱えるよね?
司令補佐と言っても基本的にモニターいじったりデータ出したりだから、負荷はそんなにかからないはず。判断力は問われるけどな。補佐は司令の右腕みたいなもんだよ」
「そ…そうなのか?」

鼎、宇崎のざっくりしすぎた説明に困惑。


「最近残党出てないから、研究室でシミュレーションしてみるか?
鼎の指揮能力がどれくらいあるのか見てみたいんだ」
「そんな機器、いつの間に作ったんだよ…」

宇崎はとぼけている。
「長官が作ってたみたいだよ?指揮系統の訓練用にって」


何でも作るよな…蔦沼長官…。変態の域に行ってる…。室長は長官の後輩なんだっけ。


「いつ実戦が来るかわからないから、訓練した方がいいかもね。
鼎は今まで最前線で戦ってきてたから、こういう場は初めてだろう。指揮系統も戦いなんだよ」



ゼノク・司令室。


「あんなにガチガチに緊張する紀柳院、初めて見ましたよ」
西澤が呟く。

「彼女は組織のリモート会議も初めてだし、『司令補佐』という肩書きもあるから…初めてだらけだから仕方ないよ。
宇崎からの報告で、紀柳院は肩書きの重圧に押し潰されそうになってるみたいだとか聞いたなー…。彼女にプレッシャーをかけてしまったのかもしれない」


蔦沼もかなり気にしている模様。

「だいたい『本部司令候補』って言っちゃったからな〜。宇崎のやつ、空気読めないのか…」
「西澤落ち着いて。何のための仲間だよ。彼女には心強い仲間がいるでしょう?御堂と駒澤がいるから案外大丈夫かもしれない。
紀柳院もやる人だから。意外と肝が据わってるだろ」


言われてみれば、確かに…。


「御堂も隊長になったから大変みたいだけど、紀柳院に寄り添っているらしいからね〜」
「いつの間に仲良くなってんだ…。あの2人、そういう関係でしたっけ?」

「こらこら、深入りしないの」



「きりゅさん、どこ行くのー?」
時任が話し掛けてきた。

「研究室だよ」
「研究室?」
「指揮系統のシミュレーションしに行くんだ。私からしたら指揮系統はわからないことだらけだし、現場とは違うからね」

「きりゅさん、身体…大丈夫なの?」
「発作が出なければ」


時任は鼎の後ろ姿を見た。

なんか…背中が寂しそう。肩書きの重圧に耐えてるのかなぁ。
私もきりゅさんの力になってあげたい。


鼎は治療を受けたとはいえ、身体は既に限界が来ている。たまに発作を起こすらしく、激しい運動はドクターストップがかけられている状態。
日常生活で少し走るくらいなら平気なのだが。



「司令補佐」という重圧が鼎の肩にのし掛かる。
馴染みの仲間達はなんとかして支えたいと思っている。


御堂は「隊長」ということもあり、彼は彼で忙しいのにわざわざ彼女のために時間を空けている時も。


御堂は鼎に「些細なことでもいいから困ったら何でもいいから相談しろ」と伝えてある。
これは鼎の性格を熟知しているから言える。彼女はひとりで悩みを抱え込みやすいから。

御堂は何度も相談に乗っていた。





番外編 司令補佐(下)へ続く。


無題


話題:おはようございます。
昨日の拍手11個ありがとうございます。なんかやったら変な夢を見た。内容は忘れたが。


今日は暖かくなるみたいですね〜。1月にしては高い気温らしい。この時期に10℃って聞いたことがない。

昨日もそこそこ暖かかったのですが、今日はさらに暖かくなるのか…。



自己満小説、最終回修正かけまくった。よくある特撮の最終回みたいになってる…。ありがちすぎて。
本編完結させたので、補完と補足的な番外編に行けるー。番外編は後日談&過去編的な。後日談と過去ごっちゃも。
補完も補足もない話も書きたいが。

もし、シーズン2を書くとするならば主人公の晴斗が特務機関ゼルフェノアに正式に入った後の話になるだろな〜的な。
もうひとりの主人公の鼎さんは司令補佐になってるから、立場が変わっちゃうんだよね…。


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