掃いて捨てる

0717 :彩雲国
別姓結婚(双玉)




「浪静蘭、っての結構しっくりこねえ?」

「は?」



夕刻を少し回った頃。
少しは休憩したら、と秀麗が持ってきてくれたお茶を飲みながら一息ついたときのことだ。
何やら真剣な顔で考え込む燕青がようやく口を開いたと思ったら、そんな言葉だった。



「浪静蘭。ほら、字面も結構かっこいい」



わざわざ神に書いて見せなくても、静蘭の頭はそこまで悪くない。

汚い字だ、と。内容をあまり深く考えたくなくてそんなことをぼんやりと思う。
静蘭が何も返さずにいるのにもかかわらず、燕青は一人で楽しそうだ。



「シ燕青、ってのもなんか高貴っぽくね?」



そんなことまで言いだした燕青に、思わず冷たい声が出る。



「お前には、捨てられないだろ」

「ん?んー…まあな」



困ったように笑う燕青がずるいと思った。
本気だったのか、冗談だったのかもう分からない。




「でも、静蘭だって捨てられないんじゃねーかとも思ったんだよ」

「捨てる気などない」



旦那様が、奥様が、くれたこの名前を。



「でも邵可様が言ってたぜ〜『妻が、名前を書いたら所有物と言い張るからね』って」



そういえばそんなことを言われた気がする。
彼らは最初から自分の正体を知っていた。知っていながら、拾い上げ、名付けた。



「じゃあ静蘭は今もまだ秀麗のお母さんのものかよーって」

「だから浪で縛ろうとでも?」

「ま、簡単に言っちゃえば」

「ばかばかしい」

「ちょ、そんな吐き捨てなくたっていいだろ!」





バカバカしい、と静蘭はもう一度心の中で呟いた。

何もかも縛っておいて、名前すらも縛りあったらきっと――



終わる


―――――――


ストレス発散でした。




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