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愛しさも切なさもひとつに溶けて、(銀魂:土方)

そう言えば大事な日にはいつも雨が降っていたなぁ と、大きな窓の外で未だ降り続いている透明な粒をぼんやりと見つめながら思った。
告白した日も初デートの日もはじめて喧嘩した日もプロポーズされた日もいつだってこんな風にしとしとと雨が降っていて、ふたりでぎゃあぎゃあ騒ぎながら相合傘をして濡れた歩道 生まれたての水たまりを飛び越えながら歩くのが日常だった気がする。

小指を繋ぎながら沢山の季節を同じ視線で過ごした彼との思い出の背景はほとんど曇り空とあめで埋め尽くされていて、記念すべき今日も梅雨晴れだと聞いていたのに予報外れの雨 きっとあの人に「お前はホント雨女だな、」なんて言われることを覚悟しながら雨の音にそっと耳を傾けてみる
ぱらぱら、と言う音に混じって聞こえる誰かの話し声 あたしの名前と彼の名前が聞こえる度にああ、今日の主人公はあたし達なんだな、そう思った。






コンコン、と扉が鳴る。どうぞと短く返事をするとガチャリと扉が開いて現れたのはあたしの結婚相手で黒いタキシードに身を包んだトシだった。こんな時にも相変わらず煙草を吸っていてここ禁煙だよ、て呟いたら緊張をほぐすためだっつーの、て煙を吐きながら答えてきた。
いつもと違う雰囲気にどきどき、正面にいるトシを直視出来なくて真っ白なドレスにあちこち付いてるレース部分をもてあそんでみる。ああ畜生カッコ良いんだよ、土方の野郎!(思って後悔)(あたしも土方だった)


「準備出来たか?」

『…ああ、まあ、ね』


そりゃあまあ人様の前に出るもんですからプロのスタイリストさんにメイクとか髪とか色々やってもらった訳で、でも何だかそれをトシに見せるのが恥ずかしくて曖昧に返事をする。今更になってなんで恥ずかしいって感情が出てくるんだろう


「…顔、上げろよ」

『…絶対いや、』


無理無理無理絶対無理!こんな状況で顔上げてトシのことなんか絶対見れない!つかなんでこんなに緊張してるんだ自分、そんな間柄でもあるまいし
今のあたし、トシに告白したあの日並にどきどきしてると思う。

こつんこつん、とトシが靴音を鳴らしてあたしに近付いて来るのが分かる。それに比例して高鳴る心臓にいよいよ我慢の限界、呼吸困難を起こして泣きそうになった。


「オイ、」

『…何?』

「こっち向け、コラ」

『だから無理…っ!?』


瞬間、あたしの目に飛び込んできたのはしゃがんであたしを見上げるトシの姿で思わずすっとんきょうな声が出てしまった。


『うえぇっ!?ちょ、やだ、見ないで!!』


真っ直ぐ見つめてくる視線からなんとか逃れようと両手で自分の顔を隠す、けれどトシはそっとあたしの手を握りいとも簡単にそれらを退かしてしまった。


「何で隠す必要あんだよ」

『だ…って、恥ずかし…っ!』

「  、すげェ…綺麗だぜ」

『……え?』


一瞬トシの言ってることが分からなくてきょとん、とする。だってトシの口から綺麗、だなんて言葉が出てくるなんて。(思えばトシに可愛いだとか綺麗だとか言われたことないや)
少しだけトシに視線を向けると頬どころが耳まで赤くなっていたからそれを見たあたしにも伝染、


「あー…誰にも見せたくねェ、」


雨音に掻き消されそうな声、だけどあたしの耳にはしっかり届いていた
ぎこちない会話、不器用なりに言葉を紡ぐ。


『と、トシだって…全然かっこいいよ』

「…どーも」

『…うん』

「…」

『…』

「…」

『……(き、気まずい…!)』


ぎゅ、とトシの手に力が入る。何を言われるんだろうと色々考えてみたけど答えは出なかった
どこからか聞こえていた話し声も喜びも哀しみも何もかも全て消えて残ったのはあの灰色のそらだけ、いつの間にかここはふたりぼっちの世界になっていた、から。


「…オイ、」

『…うん、』

「……、




お前、やっぱり雨女だな」






え。

今までの空気ぶち壊し発言に(世間ではそれをKYと言うらしい、)思わずトシの方に目をやると当の本人は意地悪く笑っていてあたしの額をコツンと軽く叩いた。


『な…っ、何それ!!』


誰だよいい雰囲気だなんて言った奴は!(え、誰も言ってない?)ああ、あのときめきを返せ土方コノヤロー!…って、だからあたしも土方なんだってば、


「だってそーだろ、今日晴れだって天気予報でもやってたのに一日中雨とかあり得ねェだろが」

『そ…そんなの知らないし!天気予報だって外れる時だってあるもん!』

「まぁ、俺は今日の天気は絶対雨だって思ってたけどな」

『それって遠回しにあたしのことを雨女って言ってる訳!?』

「たりめーだろ」

『っ、ムカつくっ…!!』


眉間にしわを寄せてトシを睨むけどなんだか単純なことでいがみ合うのが馬鹿馬鹿しくなって次の瞬間にぷ、と噴き出していた。それはトシも同じで口元に笑みを浮かべながら煙草の煙を吐き出す。それが見事におんなじタイミングだったからまたふたりで目を合わせて笑って、






「新郎さん新婦さん、準備出来ましたか?」




六月は君の永遠



弱まった雨、灰色が途切れて少しだけ見える晴れ間
道も屋根も雨露に輝いてふたりだけ  そんな六月の永遠のヒトカケラ。



【song by:FictionJunction YUUKA“六月は君の永遠”】

スノースマイル(銀魂:沖神/苦手な人は見ないでプリーズ!)

後何回ふたりでこの短い季節を過ごせるのだろう、と、ふとそう思った。

今日の天気は一部で初雪が降るらしい。そう言えばアイツ初雪を楽しみにしてたなァ よし逢いに行くか、なんて考えてしまう自分の単純な思考にこっそり苦笑い。きっと今頃アイツはそらを見上げて降るか降らないか微妙な初雪を待ってんだろうなァ、俺のすきな笑顔で。あ、ちょ、待って外寒くね?
自然と早足になるのを冷たい気温のせいにして、今日も俺は愛しい彼女に逢いに行く。






冬が寒くって本当によかった
今にも降りそうな曇り空の下、ふたり分の足音ぽつり。


『お前知ってるかィ?今日かぶき町で初雪が観測されるらしいぜィ』

「マジでか!…でも雪は食べられないから嫌いネ、ただ冷たいだけアル」

『これだからガキは嫌だねィ、風情のふの字も知らねェ女に話を振った俺が馬鹿だった』

「テメーもまだガキだろーがコルァ!フゼイ、くらい私にだって分かるヨ!」

『オイ、そー言うのはまず漢字変換出来てから威張ろうぜィ』


俺の隣を歩いていた女が道端に寝転がっていた落ち葉を蹴飛ばす。カサリ と音をたてひらひらと地面に落ちるそれ、あんまりはしゃぐんじゃねーやい今に転ぶぞ、なんて口では言うもののそんな君が愛しくて愛しくて




なァ、何で怒ってんのに楽しそうなんだよ?


君の喜怒哀楽を決めるその理由が一番で俺だといいなァ なんて柄にもねーことを考えてみた。(そんなの絶対コイツに言えねェ)(だって格好悪ィだろィ)


「お前より先にフゼイを味わってやるネ!雪よ降れ〜雪よ降れ〜」


そらに向かって口を尖らせながら呟く。そんな人生上手くいく訳ねーだろが
でも、もし初雪をコイツと一緒に見られることが出来れば俺はいるかどうか分かんねェ神様に感謝するかもしんねーな、多分。


真っ白な出来立ての絨毯の上、ふたりで靴音鳴らしながら歩けたら素敵だね、



『…チャイナァ、』

「あぁ?何だヨ?」

『  、寒くねーかィ?』

「キモ!なんじゃそらヨ、いきなり!」

『キモ!ってなんでィ、失礼な』

「まぁ…寒いっちゃあ寒いアルけど……て、ぅわっ!」


ぐい、と半ば強引に彼女の冷えた手を俺の隊服の右ポケットに突っ込む。その中でぎゅっと小さな掌を握ってやった。


『手ェ冷てーな、そんな格好してるからだろィ』

「ちょ…っ、な!何するアルこの変態っ!!」

『いいから黙ってろィ、ったく…』


なんだか自分のした行動が急に恥ずかしくなってそっぽを向く。隣の女は最初はぎゃあぎゃあ言いながら傘を振り回していたけれどしばらくして無口になって俺もなんか照れ臭くなって沈黙、




ふたつの足音は重なりながら乾いたそらに千切れて消える。


狭い歩幅に合わせて歩くのがまだなんとなくぎこちなく感じたけれど彼女と同じ歩くスピードでおんなじ景色を見れることにちょっぴり幸せなんか感じたりなんだり
普段の散歩でも普通に歩いてるのに気付けば彼女を置いてってるから出来るだけゆっくり歩く。いつしかそれが俺の習慣になってて自分もびっくり、彼女の前だけの約束事




『あ、』

「あ、」


不意に重なった声と声、雪のない道に立ち止まった影と影。瞳を隣の女に移すとカチリと視線が合って同時にニマリ、と笑う。


「…見ろヨ、雪アル!」

『…ホントに降ってきやがったなァ、初雪の野郎』


灰色のそらから白い雪が降る、降る。ジャストタイミングと言うかなんつーかとにかく雲の上にいる神様にありがとう、とこころの中で呟いてみる。



「…おい、バカそーご」

『…何でィ、バカ神楽』


コイツの名前を呼ぶのは久々だった。逆にコイツに名前を呼ばれるのも久々だったからなんだかこころがむず痒くてうずうず、


そんな気を知る訳もなく彼女は俺の大好きな笑顔で笑いながらこう言った。






「…雪積もったら、一緒に雪だるま作るアル!」




それは、近い未来の約束事



俺に向けられた笑顔が可愛くて可愛くて思わず『好きでィ』と言いたくなったことは内緒。

その言葉を隠すようにやっぱお前ガキだなァ、なんて言ってみたけれどその誘いを断れない自分もガキなんだろーなァ、(まあいいや)(ガキでもなんでも一緒にいれるんだったら)




【song by:BUMP OF CHICKEN“スノースマイル”】

嘘つきの中の真実ひとつ(D.Gray-man:ラビ)

ひとところに留まらず、情を移さず情に流されず、まるで何事もなかったように現れそして去って行くのがオレ達ブックマンでその掟はずっとずっと変わらないと思っていた。そんなオレが見つけた自分が戻る唯一の場所、アイツの温もりの隣。あったかくて優しくてこのままその居場所に溺れていたい、その居場所を守るためなら何だってやると決意したあの日。ああ今すげぇ幸せだ と、そう思ったのを今でも覚えてる。

でも幸せだったのは多分あの時が最初で最後だったと思う。なぜならオレは自分の居場所を自分で手放してしまったから。
終わりは想像していたのより遥かに呆気なくてそれでもオレのこころを苦しめるのには十分だったひとつの別れ、オレと彼女は住む世界が違うんだと改めて認めた時にオレは何も言わずにアイツの傍から姿を消していた


大事なもの、なくしてから気付くなんて遅い  のに。






またこの広いそらの下、出逢うなんて思ってなかったから。


「…ディック?」


聞き覚えのある声に見慣れた風姿、オレの目の前に現れたのは他の誰でもないアイツだった。


『──…え?あ、』


懐かしいその姿にオレはただ戸惑うばかりでまともな言葉が出てこなくてもちろん相槌すらも


「あ…今はラビなんだっけ?ごめんねラビ、久し振り」

『 え…っと、あの、』


そんなことを言われたからオレの頭の中は益々こんがらかって整理出来ない位にごちゃごちゃ、一から組み立てようとするけれど心臓の鼓動が耳元で煩くてなかなか上手くいかなかくて、


『う……あ…えと、あの、ひ、久し振りさ…』


とりあえず出た言葉がそれでちょっと自己嫌悪(もっと違うこと言えねぇんかオレ!)それでも目の前の女はニコリと笑ってくれた。その笑顔でようやく全てを現実として受け入れることが出来た。

ゆっくりと、あの日から止まっていたオレの時計が動き出す。


「…元気だった?」

『あ、ああ…まぁな。お前は?』

「うん」


ざわざわ。
街のざわめきにふたり分の会話はあっさりと溶けて消える。


『…どうして、』

「え?」

『、どうして“今”のオレの名前…知ってるんさ?』

「ああ、さっき駅でディック…じゃない、ラビを見かけた時に貴方の隣にいた人がそう呼んでいたから、」

『そーなんか』




ざわざわ。
相も変わらず変わらない喧騒


「…ここには任務に?」

『んー、ただ立ち寄っただけさ』

「そう…」


ぎこちない会話、それでもこころが安らぐのは何故だろう
ふたりの間にはいつの間にか深い溝があってどうしても一歩が踏み出せなくて、


『…』

「…」




沈黙。


何か喋らなきゃ そう思った矢先だった。いきなり彼女がふふ、と笑い出した。


「変わらないね、その癖」

『え?』

「ふたりきりで少し気まずくなった時、ラビはいつも頬を掻くの」


そう言って頬にあったオレの掌に自分の掌をそっと重ねてくる。布越しに伝わるもうひとつの体温にどきりとした。

ざわざわ。






「…ごめんなさい、」


ため息のように呟かれたそれ、意味が分からなくて思わず聞いてしまった。


『……何がさ?』

「  、あのね」


真っ直ぐ見つめてくる瞳、頭からつま先まで暖かくオレを包んでくれるその目。逸らすまいとしっかり見つめ返す。


「……ディックを駅で見かけた時、無意識の内に貴方を追い掛けていたの」


ふたつの瞳にみるみる涙が溢れ出す。それは留まる所を知らずに次々と、


「捨てられた女が何やってるの、って話よね…でもずっとディックのことを忘れられなくて、ずっと逢いたくて逢いたくて」


ぽろぽろと零れ出す透明な涙、それを隠すように俯いた瞬間に彼女の香りがふわりとオレの鼻孔に届いてくらくら




ああ、ダメだ。


こころの奥で軋むこの感情──忘れられなかった、一日たりとも忘れることが出来なかったんだ
何故あの時黙っていなくなってしまったんだと、彼女は嘘ばかりのオレを受け入れてくれたのに。

こんな身分じゃなかったら  なんてそんなの言い訳にしか過ぎなくて昨日も今日もオレは弱くてコイツを連れ去ることすら出来なくて、


『…泣くなよ、』


抱き締めたい衝動をぐっと押さえる
住む世界が違うのだ、ふたりは。

これ以上深みにはまる前に、過去に甘える前に。



『オレは、もう…お前の涙を拭いてやれないさ…』


冷たく言い放った言葉、彼女が嘘だと気付く前に消えなければ。




ほどけてく手と手、立ち尽くした影と影



すき なのに。

その気持ちを伝える術がないなんて可笑しな話だ、




【song by:GOMES THE HITMAN“手と手、影と影”】

はじめのいっぽと君の笑顔(銀魂3Z:高杉)

「晋ちゃんはいつも怖い顔してるから、あたしを見てニコリと笑って!」といつだったかアイツは俺にそう言ってきやがった。その日からアイツは俺の目の前でガキみてェにくるくる回り始めた。登下校ん時はもちろん俺に近付いてくる時は必ず回りながら近付いてきて(晋ちゃんに逢えた喜びの舞!とかいつの間にか名前もついてて普通に驚いた)
そのくせ運動神経が皆無に等しいのでこけそうになるその度に俺が助けてやる。いつしかそれが日常になっていて当たり前のように誰も何も言わないまま、






くるくるぐるぐる跳んで回って、見ているこっちが目を回しそうだった。



「おはよおぉう晋ちゃあぁぁん!!!」


いつものように回りながら玄関の門をくぐってきたのは俺の幼馴染みで、寝起きで上手く働かない俺の脳ミソにデカい声がきんきんと響く。ああ朝からうぜェ、と思いつつそれを口に出さねェのは慣れからくるモンなのかコイツが幼馴染みっつー特殊な存在だからかは分からなかった、けど。


『オメーは今日も元気だなァ』

「そりゃ元気があたしの取り柄ですからね!」


へらりと笑ってもう一回転、コイツの元気の源は一体なんなんだろうとふと疑問に思ったが「ほら、早く行かないと学校に遅れるよ!」と言われ、鞄を担ぎ直してポケットに入ってる煙草に手をかけたが隣に並ぶ幼馴染みのことを考えて手が止まった(煙草を吸う度受動喫煙反対!なんて叫ぶモンだからこっちが恥ずかしい)

気を取り直して空を見上げるとカラリとした晴天でぴゅう、と少し冷たい風が吹き抜けた。そう言えばコイツと過ごす春はこれで何回目だったか、ぼんやり考えながら歩き始める

そして、この時がいつまで続くのだろう と。




歩き慣れた川沿いの通学路、突然隣を歩いていた女が声をあげた。


「あ、見て、ちょうちょ!」


その先にはひらひらと舞う白い蝶、それをぱたぱたと追いかけるアイツを見て無意識に笑みが浮かんだ。ホントガキみてェだよなァ、蝶なんざ追いかけて何が楽しいんだか。それでもアイツは蝶を追いかけるのを止めない。ため息ひとつ、呆れた声で俺は呟いた。


『…オイ、遅刻すっぞ』


遅刻常連者の俺が言っても説得力がないその言葉だけどアイツは蝶を追いかけるのを止めて俺の方に体を向けてまたくるくる回った。


「ねえねえ晋ちゃん、桜が綺麗だよ!」


そう言ってある一点を指差す。俺の目線はアイツの指先から伸びる見えない線を辿る辿る、目に入ったのは川の向こう側にある桜並木


「もうすぐはーるですねぇ、恋をしてみませんかぁ〜♪」


歌いながら今度はその場所で踊り始めた。(歌の選考がちょっと古くねェか、)昭和のアイドル顔負けの軽やかなステップで回り、笑う


と、その時だった。


「つくしの子がはずかしげに〜…、わっ!」

『、っ!』


フラフラと足がもつれ、倒れそうになるアイツを見てああ、転んでしまうと思った俺はぐっと地を蹴り一瞬にして開いていたふたりの距離を縮める。すんでのところで何とかアイツの体を抱き止めることが出来たが予想以上に俺の方に倒れてきたので踏ん張りきれずにふたり揃ってフラリと転んだ。


『…ってー…』

「ゎ、あ!し、晋ちゃんごめん!大丈夫!?」

『……ったく、毎度毎度世話ァかけさせんなや』


言いながらじろ、と近いくらいに目の前にいる幼馴染みを見る。最初は不安そうに申し訳なさそうに俺を見ていたがその表情は次第に笑顔になっていって、


「──さっきの晋ちゃん超カッコ良かった!さっ、て風のようにあたしを助けてくれたあの瞬間!!転んだのはちょっとカッコ悪かったけど、」


なんていきなり言うモンだから、俺はその場違いみてェな発言に目を丸くしてたがその言葉がやけに可笑しく感じてくすり、と笑う。


『カッコ悪ィって何だ、殺すぞコラ』




ああ今だけは君の仕草で笑っていたい



あ、ようやく晋ちゃんが笑ってくれた!




【song by MONKEY MAJIK:5.30

あなたのいない明日が来ても(SLAMDUNK:三井)

言葉を失った世界で今日も僕は貴女を追い掛ける。
ふらふら 悪夢の端っこをさまよう小舟の帰るところはいつもお前の真ん中だった。きっとそれは生涯変わらなくて、俺の気持ちならいつまでも一緒でずっとお前を想い続けるのだろう。

まぶたの裏に焼き付いた昔の思い出はどこか見つからないようにしまって
そこにあり続けたホントのカタチと向き合うにはまだ早いから、






すきだよ と叫んだ声は屋上に広がる灰色のそらに混ざって消えた。真夏の雨はひどく冷たくて君の後ろ姿さえも洗い流してしまったようで
ぼんやりと薄れていく輪郭にただ涙することしか出来なくて、


『  、すきだ』


止まない雨の音が切なさで震えた声を掻き消した。
それでも俺は必死に指先を伸ばして、愛しいお前に届くように  と


『なあ、俺は』

『 俺は、お前しかいらねぇんだよ』





ざあざあ。



終わらない迷路の中で迷い子になった子供のようにぎゃあぎゃあと泣きわめけば、あの愛しかった日々が戻ってくるのだろう と、馬鹿みたいに幼いこころがそう信じて
それでも世界はぐるぐる回ってふたりの距離を遠ざけるだけ、なのに。


『   だから、』






  。




いなくならないで、






ああ、
ダメだ

消えていく
消えていく



消えて、いく。








まあるい地球を蹴って翔ぼうとしたけれど辿り着いたのは貴女の傍ではなくて何かが欠けた現実だった。

夢ならば醒めないで そう願った一番星はくだけちって
戻らない過去を嘆いては雨音で途切れ途切れの文章を思い出す。



揺れるゆれる、ちいさなかげ。
ぽつりぽつり溢れる泣き虫 それは遠い日の自分自身




  あたしにとって寿が全てだった

  永遠に傍にいたいと思ったのは後にも先にも貴方だけでした

  きっとあたしは、


  これからも寿だけを想って生きる



だから、






「  さ  よ な ら   、」




そしてどうか忘れないで、と
最後の口付けと
そう言い残して。







うろ覚えの笑顔を思い出して産まれたばかりのこころが軋む、



ああ、どうして。




『…何も無くてもお前さえいれば、』

『お前さえいれば俺はそれでよかったんだ』

『  なあ、お前は』


『お前は違った のか?』




嬉しい想い出ひとつ、そらを舞い
悲しい想い出ふたつ、地面を駆けた。


きっとまた明日、
日が暮れてまっくらになったら一方通行の逢瀬が始まるから
俺はまた聞き慣れた声に導かれて自分のこころをかきむしって傷付ける。


お前の残像だけを追い掛ける。




ざあざあ。

きっと、永遠に。



『  、すきだ』

『なあ、俺は』


『 俺は、お前しかいらねぇんだよ』



真夏の雨の中



もし戻れるならふたりが出逢う前まで




【コラボ夢:byやまと】
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