私の
オススメの映画です。
ネタバレ有りですので気をつけて。


あらすじとしては、ある中学一年の少年が社会科の課題で、世界をかえる方法を考える。そして彼が思い付いた方法、それが『ペイフォワード』=『次へ渡す』だった。まず彼自身が誰か三人に良いことをしてやり、その三人がまた他の三人ずつに何か良いことをしてやる。そうやってどんどん広がり、活動が大きくなれば、このクソみたいな世界はもっと良くなるのではないか?と彼は考えたのだ。


私個人としてとても好きな映画。
世の中そんなに上手くいかないかもしれないけど、「ペイフォワード」という考え方も好きだった。渡すのも渡さないのもそれぞれの自由だけど、人の善意を信じて渡すという純粋な心を持ち続けたいと思う。

また彼は映画のなかで「世界はクソだ」と言っている。
確かにアルコール依存、シングルマザー、DV、いじめ、薬物依存、虐待、ホームレス、犯罪…彼のいる世界はとても素敵とは言い難い。
思春期という多感な時期に、本当の世界が少しずつ見えてきて、大人や世界の汚さ、不公平さを見て、嫌悪した経験って誰にでもあるのではないだろうか。
そういう部分でも、主人公の気持ちには共感できる。

そして何よりも、主人公へのインタビューシーンがこの映画の一番の核心なのかな、と。

彼はインタビューのなかで、こう言っている。

「世の中にはとても臆病な人たちもいる。… 変化が怖いんだ。( I think some people are too scared or something… to things can be different.)

本当は…世界は思ったほどクソじゃない。 (The world's not exactly shit.)

だけど日々の暮らしに慣れきった人々たちは 、良くない事もなかなか変えられない 。(I guess it's hard for some people who are used to things the way they are even if t to change. )

だから あきらめる。
でも、 あきらめたらー‥‥負けなんだ。 (And they kind of give up and when they do, everybody kind of lose.)」


このインタビューの後すぐに、彼は命を落とすことになる。

以前、いじめっ子たちから助けられなかった友人を助けるために、勇敢に立ち向かって。

ネットのレビューなんかを見てると、この結末に対しては不満は多いみたいだけど、私は別に有りかなと思う。

まあ確かに急展開過ぎるし、理不尽な結末ではある。
レビューにも人助けの結果がこれ?とか、現実は甘くないと興ざめしたというのもあったし。

でも私は、彼はどちらかというと″友人を助けるため″というよりも、勇気を出して″自分自身を変えた″のだと思う。

以前は見て見ぬ振りしかできなかった情けない自分を変えたのだ。

結果的には死んでしまったし、刺されて倒れる彼はもしかしたら立ち向かったことを後悔したかもしれない。

でもこれでいじめっ子を倒してハッピーエンドだったら、それこそ嘘くさい映画になる気がする。

この映画の原題は『Pay It Forward』だけど、日本版で副題として『可能の王国』を付けたのは正解かもしれない。

この映画は、″善意を次へ渡す=ペイフォワード″という方法にこだわらずに、『世界』を変える方法として見てみてほしい。

例えば、私一人がいま何かをしても日本や世界はおそらくどころか、ほぼ絶対変わらないと思う。

戦争もなくせないし、日本やどこかの国の不況をどうにかすることもできない。
他にも問題は山ほどあるけど、どれも解決できそうにもない。

でも、私がいま何かをすることで、私や私の周りの『世界』は変わるかもしれない。

一人一人の『世界』が合わさって重なって、世界は出来ている。
『世界』は、その人の考えや行動、また周りにいる人や置かれている環境によって形づくられている。

だから、一人一人が『世界』を変えることで変えようとすることで、もしかしたら世界はもう少し素敵なものになるかもしれない。


『諦めたらー‥負けなんだ』

本当にその通りだと思う。
自分のなかにある何かに気づかせて、変わるための勇気、希望をあたえてくれた映画である。

ラストのシーンでロウソクと車のライトがずっと続いていく画は、単純にきれいだ。

どうして主人公が死ななければならないのかという悲しみや憤りとともに、人々が亡くなった彼を想って灯した光は「世界は思ったほどクソじゃない」と希望を持たせてくれるような優しい光だと思う。


変わることが必ずしも正解かどうかはわからないし、最終的に決めるのは本人以外の誰でもない。

しかし、現状に何か疑問や違和感を持ったとき、慣れきった『世界』を変えるための
勇気を持って何かを行動することで新しい景色(可能性)が見えてくることもあるということを忘れてはいけないと思う。