君は僕の斜め前の席にいた。はつらつとした姿は太陽のように輝いていて、僕はそんな君が羨ましかった。
ある日の昼休み、いつものように屋上でひとり読書をしている僕に誰かが話かけているのが聞こえた。「今日いい天気だね。」
君だった…
……
…。
ジリリリリリ…
バンッ!
…朝か。
外から聞こえるリズム良く弾むバスケットボールの音がそれを教えてくれた。それが同時に夢だったことも。
今日の予報は昼から雨だった。
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退屈すぎる…。
リスニング?英語なんて知らねぇよ、日本人だし。
先生のマックはアメリカ人だ。陽気でいかにもアメリカって感じ、まんまイメージ通り。
他のやつはマックの授業を楽しそうに聞いていた。
僕は英語が好きじゃない、何言ってるかわかんないし、将来使わないでしょとしか思ってない。
もちろん成績は英語に限ってはクラスでドベ3常連。その内僕と健人は固い。
健人は中学からの友達で中学では同じサッカー部だった、そんで僕等は親友、と思ってる。
空曇ってて、眺めたって気分良くねぇな…。
なんて思ってたら教室では笑いが起こっていた。
健人がマックに当てられたらしい。
健人は困っている、
『オ、オケ!ワンモアプリーズ、スピークミィ、マック!』とわけのわからない英語を話した。
その途端教室が沸いた、みんな笑っていた。
僕は彼女を見た、彼女は笑っていた。その後、後の席の愛美となにやら話しているようだった。
愛美は彼女の親友で家も近所で幼い頃からの幼なじみ。
性格は積極的だがすぐに泣きつく脆い一面も持っている、顔はタイプじゃないがなかなかかわいいと思う。
そんな愛美が健人に惹かれているのはもうわかっていることだ。
そのことでしばしば健人と話すこともあるが健人はいつもはっきりしない。
ついでに彼女の事も話題にあげてみるが健人はそっけない。
僕が彼女に惹かれている事もまた、話せずにいた。
時が少し過ぎ
真夏日が続き寝付けない日々が続いていた夜。
夏休み前の試験が近いのに関わらず、だらだら過ごす僕の携帯が鳴った。
僕等の歯車が狂い始めたのはここからだった。
『もしもし…』
健人からだった。
『ちょっと話があるんだけど、困った…。』
なんとなくどんな話かはわかっていた。
健人が愛美に告白されたらしい。
健人は歯切れ悪そうにその時の事を話してくれた。
「で、お前は何て言ったんだよ。」いつもはこんなに話してくれない健人に対してなんだか饒舌になって切り返した。
『俺は…、あいつがあんまりに言い寄ってくるから本当のこと言った。』
「本当のこと?」
『俺がまだあいつの事好きだってことをだよ』
「え…」
僕は健人の言った意味はすぐわかったが、それを受け流すことが出来ず言葉が詰まった。
「あ、あぁマジで?お前それ俺にも言ってなかったじゃねぇか」
『…』
「...おい、健人?」
『だってお前、あいつのこと好きなんだろ』
「え...」
『わかるって、そんくらい』
「...」
『...』
「...だよな」
健人と彼女は高校一年の時付き合っていた。
しかし間もなく喧嘩をして別れていた。
そこから健人に彼女の話をしても素っ気なくなっていった。
電話が終わって、僕はベッドにダイブし
天井を仰いだ。
天井の天体ポスターを眺めているとなんだか気分が落ち着いていくのがわかった。
到着点のない闇に吸い込まれるように、僕のこの行き場のない気持ちは宇宙とともに広がり続けていくような気がした。
彼女が太陽なら
健人が地球で
僕は天王星だろう。
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キーンコーンカーンコーン...。
最後の授業が終わり
いよいよ夏期の長期休暇がはじまった。
先日の期末試験の結果は散々だった
かろうじて赤点は免れたが
やはり英語だけはどうしようもなく
追試が決まり、僕は休暇中に学校に通うはめになった。
勿論、健人もだ。
健人は数学も追試らしい。