「戦闘員が進化しただと!?それで進化した戦闘員は倒したんですか」
宇崎はゼノクの蔦沼・西澤とリモートしてる。宇崎は本部・司令室にいた。

蔦沼はあっけらかんとしてる。
「進化態2体は暁と紀柳院が発動使ってズバーッと倒したよ」
「倒したの!?中級メギドにしては強いとは聞きましたが、倒したの!?」


大事なことなので2回聞いている。


「進化態は植物系だと判明したんです。何者かが関与してますね」
西澤が付け加える。宇崎は少し迷ってから言ってみた。

「やっぱり…元老院ですかね」

蔦沼は続ける。
「戦闘に出撃した隊員達によれば、戦闘員の色が微妙に違っていたんだそうだよ。今までとはどうも違うらしい」
「色が違う…?」



ゼノクへ派遣された5人はまあまあ、この環境に慣れてきていた。
ゼノク隊員の主力数人とも会話やトレーニングを交わすようになる。


上総(かずさ)は二階堂を探していた。あいつどこ行った?
すれ違い様に職員達に二階堂の場所を聞く。彼女は研究施設にいることを知る。


「研究施設ぅ…?」



ゼノク・研究施設。ゼノクの大元はこの施設だ。二階堂はそこで戦闘兼用義手と義足の試着をしていた。側には蔦沼がいる。

「戦闘兼用義手と義足、見た目はそんなに変わらないでしょ?君には戦力になって欲しいんだ。ゼノク隊員として」


二階堂は右腕の義手を眺めてる。蔦沼長官のものとは違う、白くてスタイリッシュな義手だが…。
左脚の戦闘兼用義足は黒い。こちらも洗練されている。


制服のスラックスは左脚、膝の下が見えるように、巻かれていた。義足の膝下には仕込み刃があるため。


「私は隊員として必要とされているんでしょうか…」

二階堂は迷っている。隊員になるべきか、否かで。


「二階堂も怪人被害に遭った身なんだよね。その義手と義足のわけ…聞いてたからさ。無理に戦えとは言わないけども、しばらくその戦闘兼用義肢で動いてみるといい。日常生活には支障ないから」


研究施設を出た二階堂は上総と遭遇する。

「二階堂、探したぞ。研究施設に行ってたのか…って、その義手と義足…」
上総は二階堂の義肢が変わっていることに気づいた。

「長官に戦闘兼用義肢を試着してみないかと言われたんだ。見た目はほとんど変わらないけど。私…まだ隊員になるかで迷ってて」
「別にゆっくり決めれば良くねーか?しばらくは戦闘兼用のままなの?」

「お試しだからね」



本部・休憩所。


時任はゼノクにいる兄と電話中。

「兄貴、調子どうかなって…」
「いちか、ゼノクに来れないのか?本部隊員が来たのは知ったんだけどさ、いちかがいないから気になってた」

電話口からは兄の優しい声。


「あたしも兄貴に会いたいよ…。声は元気そうだね…。まだゼノクスーツ姿なんだっけか」
「そうなんだよ。今のところは小康状態だから退院はしたけどさ、ゼノクスーツがないとキツいかも。だから会えても俺の顔は見えないね、なんかごめんな」
「いいよいいよ。兄貴の体調もあるんだし…。じゃあそろそろ切るね」

「いちか、お前の活躍見ているよ」


電話が切れた。時任は複雑そう。

兄貴…まだゼノクスーツ姿なのか…。顔見たいのに、見れないって…マジか…。



ゼノク・隊員用休憩所。


そこでは派遣された本部隊員と、ゼノク主力隊員の簡易交流会のようなことになっていた。


「三ノ宮と言います。互いに連携して行きましょう」

三ノ宮と名乗る隊員は頭脳派インテリ系の眼鏡の男性。


「よ、よろしく…」

御堂、どこかぎこちない。

どこか冷めてる感じの女性隊員が言った。

「私は粂(くめ)。よろしく」

御堂は粂を見て感じ悪いな〜と思った。冷たい印象があったのかもしれない。
鼎も仮面姿のせいで冷たいイメージを持たれているようだが、本人は気にしてない。


「粂と言うのか、紀柳院鼎だ。よろしくな」


あれ?鼎と粂、意外と気が合うのか?よく見ると粂…ちょっと嬉しそうにしてんし!あの態度は照れ隠しかっ!ややこしいなっ!



ゼノク・職員用休憩所。ゼノクには隊員用と職員用の休憩所がある。普段は隊員も職員として働いているため、分け隔てなく組織のゼノク所属の人間は使うことが出来る。


二階堂は同僚の鹿本に戦闘兼用義肢を見せていた。

「へぇ〜。研究施設で試着したんだ、戦闘兼用義肢。めちゃくちゃカッコいい」
「お試しで3日くらいそのままでいいよって、言われました。長官に」

「お試し期間、長いのか短いのか…」


鹿本は二階堂の左脚の制服が気になったらしい。
「もし、もしもだよ?戦うとしたらさ…左脚は膝から下を出さないと仕込み刃が展開出来ないじゃん。制服カスタムしないとならないかも。もしもの話だよ?」

鹿本、意外としつこい。


二階堂は試しに義足の仕込み刃を展開させてみる。ガシャンという音と共に膝下から足首にかけて斜めに刃が展開された。

「うおーっ!びっくりした…。この刃、対怪人用のブレードで出来てる…。すごい」
鹿本は興味津々。二階堂は義足の刃をしまい、今度は右腕の義手を展開させてみる。

「これが銃撃モード…これが刃物展開か…。手のひらのこれ、なんだろ?」

二階堂は義手の手のひら中央にある円状のものが気になった。ここが開いて何かを出せそうに見える…。


「カチャカチャ音が鳴るのは仕方ないのかなぁ」
鹿本、戦闘モードの義肢の音が気になっていたらしい。

「仕方ないと思う…。長官、戦うと義手ガシガシ言ってるじゃないですか」
「確かにな〜。長官はめたくそ攻めるタイプだから…。あの人が戦場出たら隊員いらないんじゃね?ってくらい強いからね〜」



ゼノク周辺にメギド戦闘員が複数出現。今度は人がいる場所とあって、隊員達は出撃した。

ゼノク防衛システム作動。職員達は入居者を避難誘導する。二階堂は誘導しながらあることが引っ掛かっていた。


今の私には試用とはいえ戦闘兼用義肢がある…。


二階堂は鹿本に一言告げた。
「私も行かなきゃ!」
「行くってどこへ!?ニカさん!?」


二階堂は現場へと急行する。場所はゼノクからはそう離れていない。
彼女の中で何かが変わり始めていた。





第23話(下)へ続く。