蔦沼はなんとなく感じていた。これまでにゼノク周辺に現れた敵は幹部・元老院副官・そして鐡。
この流れからするに次に来るのは…元老院の長が濃厚。


蔦沼はゼノクにシールドを張るように、西澤に伝えた。
「防衛システムはシールドだけ常に張っておいてくれ。研究施設を重点的に。あと本館・病院と各居住区もな」
「前もってシールド張るんですか!?」


西澤はどう反応していいのかわからない。蔦沼は念を押す。

「元老院の長・鳶旺(えんおう)がいつ、襲撃するかなんてわからないからね。被害を拡大させるわけにはいかないでしょ」
「確かにそうですが…もし、鳶旺が出現したら一体誰が行くんですか?」


「そりゃあ…僕しかいないでしょう。今現在、鳶旺と互角に戦える人間は自分以外いない。隊員には酷すぎるからね。強さが桁違いなんだよ…あいつは」


西澤は必死に制止しようとする。

「いや…ですが、長官。長官は10年前にその鳶旺に敗北しているじゃないですか!?両腕切断されてるじゃないですか!?何も身を削らなくても…」
「鳶旺は次元が違うんだよ。まさか鐡という、鳶旺と同等かそれ以上の奴がいたのは想定外だったが。とにかく…鳶旺が出現したら『長官命令』を行使するよ」

「長官命令使うってよほどじゃないですか!そんなにもヤバい敵なの!?」
「かなりヤバい」


司令室に緊張が走る。西澤は蔦沼に根負けした。
「わかりましたよ。シールド展開しておきます」


蔦沼は南と共に執務室へと戻った。



ゼノク・執務室。
蔦沼は南に予定の確認をしていた。

「南、敵の出現次第では今後の予定は変わるかもしれないから、そこんとこよろしくね」
「わ、わかりました。長官…何もそこまでしなくても…」

堅物の南も少し言葉を選んでる。



ゼノク周辺にシールドが張り巡らされた。
これに気づいたのは鼎。一部の職員も気づいた模様。


シールド?何のために…?強敵でも来る前触れなのか…?

鼎は窓ガラス越しにシールドを見た。鼎は彩音に呼ばれ、窓際から離れた。



ゼノク・トレーニングルーム。ゼノクにも複数のトレーニングルームが完備されており、ゼノクにもシミュレーション怪人装置が完備されている。


晴斗は上総と一緒に鍛練中。
「なかなかやるじゃねぇか!暁っ!!」
上総は楽しそう。

「壱之助、忍者みたいだな〜」
「名前は『イチ』でいいよ!照れ臭い!」


上総はゼノク隊員から「イチ」という、愛称があるようだ。
そこに二階堂も鍛練にやってきた。

「二階堂もトレーニングか!?」
上総は元気そうに聞いてる。

「鐡の脅威を見た以上、さらに強くならなくてはなりませんからね」
二階堂はシミュレーション怪人装置を起動。そしてバーチャル怪人「中」でひとり、戦い始める。

二階堂は義手を展開させ、次々銃撃。さらに刃物展開させ、斬りつける。バーチャル怪人は二階堂に飛びかかるが、二階堂はそれを交わし→義足の仕込み刃を展開させ、一気に蹴りあげながら斬りつけた。


二階堂さん、めちゃめちゃ成長してる…。
晴斗は思わず見とれてしまっていた。

二階堂はバーチャル怪人を倒した。倒したバーチャル怪人は消える。



別のトレーニングルームでは、鼎がダミーブレードでバーチャル怪人と戦ってる。

バーチャル怪人のレベルは「中」。鼎は一気に斬りかかり、蹴り技も駆使し叩き込む。
バーチャル怪人「中」をクリアしなければ、鐡や元老院は倒せない。特に鐡…。


あの男…愉快犯タイプなのか、イカれてるのか狂気に満ちていた。
あれで本気じゃないだと…!私達は勝てるのか…?


鼎はさらに攻撃を畳み掛け、バーチャル怪人をなんとか倒す。バーチャル怪人は消えた。

鼎はほどよい疲労感を感じていた。心地よい疲れ。


彩音は鼎がいるトレーニングルームに飲み物を持っていく。

「鼎〜、飲み物持ってきたよ〜。休憩しようよ」
「あ、あぁ」

鼎はダミーブレードをしまう。彩音に向けて鼎は振り返った。白い仮面が見える。
心なしか、疲れてる?


「鼎、疲れてるの?」
「え…」
「なんか今…すごいキツそうに見えた気がして。気のせいだよね…」

「最近戦闘続きだったからな…。それもハードなものばかり」
「強敵が出てきたのもあるのかもね。時々休みなよ」


彩音は鼎を気づかった。



シールド展開されたゼノクは異様な空気になっていた。防衛システムはシールド展開だけなため、ゼノクのメイン施設や居住区などは出入り可能となっている。

館内は至って普通で、防弾シャッターは閉じられていない。
このシールド展開状態のゼノクはゼノク周辺施設に住んでいる人々からしたら、恐怖。いつ敵が来るのかわからないからだ。


西澤はそれを心配していた。入居者は眠れない夜を過ごしているかもしれないと。


蔦沼は組織用居住区の自室で義手のメンテナンスをしている。南の部屋は隣なせいか気にかけてる様子。


「長官、そろそろ寝たらどうなんですか」
「義手を戦闘用として使うとなると、メンテしないとマズイじゃない。南、もう寝てもいいよ」

「いいのですか」
「元老院の長との戦いは僕の戦いでもあるからね」