対怪人用日本刀型ブレード・恒暁(こうぎょう)と鷹稜(たかかど)が突如人間化してから3週間が経った。
その間に鼎は退院、彼女は復帰までにまだかかるためゼルフェノア寮にいる。
人間化した鷹稜は元は鼎の相棒のブレードなため、ゼルフェノア寮の彼女の部屋の空き部屋にいる居候状態。…居候という表現はおかしいが。
「鷹稜、こんな形になってすまないな。空き部屋ここしかないんだよ」
「いえいえ。私は鼎さんの側にいるだけでいいんですよ」
鷹稜は空き部屋に布団を敷いている。空き部屋は客人用に鼎がわざと部屋をひとつ、空けてある感だじ。
この部屋はたまに親友の彩音が泊まる時にしか使われない。
マジシャンのような怪盗のような出で立ちの鷹稜が、布団を敷いてる画はシュール。
「鷹稜…お前、寝る時その衣装そのままなのか?寝づらくないか?」
「そこは気にしないで下さいよ」
鷹稜は寝る体勢に入っていた。鼎は鷹稜がいる部屋で彼の姿を見ると寝室へと向かった。
深夜。鼎は異変に気づく。
体に力が入らない…!それにやけに咳が出る。熱はないが。
鷹稜は主の異変に気づいたのか、寝室の扉をノックする。
「鼎さん、どうしましたか?鼎さん!?入りますよ」
鷹稜は扉を開けた。そこには咳こみ、苦しそうにしている鼎の姿が。
寝る時は鼎は仮面を外しているため、素顔。鷹稜はわざと寝室の電気を点けなかった。鼎が素顔だとわかったため。
鼎は鷹稜を見た。鷹稜は手のひらを翳して何かを診ている。
「何を…しているんだ…?鷹稜…」
「あなたの異変の原因を探っているんです。これは怪我や病気じゃないですね…」
「なんだと…」
「何者かに能力(ちから)を奪われた影響が出ている…。体と生命エネルギーの均衡が崩れてきています。それが症状となって現れてます」
「均衡が崩れたら…私はどうなるんだ?」
鼎の声が切実そう。
「最悪、死ぬ可能性もあります」
「どうしたらいいんだ!?能力(ちから)が戻ればいいのか」
「とにかく落ち着きましょう。症状が出た以上、時間が限られてきています。
能力を取り戻すには奪った敵と戦うことになりますが…今は元老院の長にその能力が行っている。危ない状況です」
鼎は鷹稜の手を掴んだ。
「症状が悪化すると不味いんだろ?鷹稜…他の隊員に連絡して欲しい。お前が行けば怪しまれる。
隊員経由で組織直属病院へ送って欲しいんだ」
「承知しました」
鷹稜はゼルフェノア寮を出ると、恒暁に事を伝える。
暁家。
「悪い、晴斗。鷹稜が鼎に何かあったようだ」
「恒暁どこ行くんだよ」
「紀柳院のところ。俺らにしか出来ないこともあるんだよ」
「鼎さんのところへ連れてって!」
「しっかり掴まってろよ、振り落とされるからな」
晴斗は恒暁におんぶされる形に。恒暁は桁違いの身体能力でゼルフェノア寮へと向かう。
ゼルフェノア寮・鼎の部屋。
鼎の症状は落ち着いたようだった。
「症状、落ち着いたようですね…」
「こっちはしんどいがな」
そこに晴斗と恒暁が。
「鼎さん!大丈夫!?」
鷹稜は自分の口元に人差し指を当てて「しーっ!」のジェスチャーをしている。
「鼎さんの症状は落ち着きました。今、彼女は眠っていますから起こさないで下さいね」
「お、おぅ…」
晴斗&恒暁は戸惑いを見せている。恒暁は鷹稜が何を言いたいのか察したようで…。
「鷹稜、紀柳院の均衡が崩れてきてるのか」
「かなり不味い状況です。また症状が出たらと思うと…」
翌日・本部司令室。
「お前達ブレードの報告のおかげで鼎に迫る危機がわかったよ。
鼎は隣の病院に一応搬送したから心配するな。ちゃんと処置して貰ってるから。組織直属病院はイレギュラーなことにも対応してるから」
宇崎は先に聞いていたらしい。
「それにしても鼎の奪われた能力(ちから)を取り戻さないとあいつの体と生命エネルギーの均衡が崩れるとか、初めて聞いたよ!?」
「元老院の長は異空間にいるのか?」
恒暁は聞いてみた。
「鳶旺(えんおう)は異空間だ。あいつは何を仕掛けてくるかわからない…」
「怪人が出なくなったのは、その前触れなんでしょうかねぇ…」
「鷹稜、それもあり得るよ。お前は鼎の側にいてやってくれ。鼎は今、薬が効いてて眠ってるから。主が心配なんだろう?」
「はい…とても心配で…」
「鷹稜は鼎の生命エネルギーで動けているんだろ。お前にも影響はあるのか?」
「今のところはないですが…。彼女の均衡がさらに崩れた場合、私は行動不能になるかもしれません」
「鳶旺を誘き寄せるか、異空間に向かわせるかしないとならないかー…」
宇崎、困っている様子。
異空間では鳶旺が鼎から奪った能力を使い、試しにネオメギド複数相手に攻撃&防御。
鳶旺は奪った「相手の攻撃無効化能力」にかなりの手応えを感じていた。
「なかなかよいではないか…。これなら計画を実行に移せるな…。異空間から場所を変えるとしようか」
本部隣接・組織直属病院。
鷹稜は鼎の側にずっと寄り添っている。相棒という域を超えているようにも見える。
お側におりますから、私をもっと頼って下さい…。
鼎の手は鷹稜を探しているようだった。鼎は目が覚めたらしく、無意識のうちに鷹稜の手を握っていた。
「鷹稜…いたのか…」
鼎の声は普段よりも力がないようにも聞こえる。
「いましたよ。もう心配で心配で。症状は緩和されたみたいですが…」
「私は…このまま何も出来ずに指をくわえてろというのか?能力を奪われたまま?しんどいのに…」
「異空間に動きがあったようですね。鳶旺はこちらの世界に来るかもしれません。そんな予感がするのです」
「鷹稜…お前が行動不能になる可能性もあるんだろ?」
「このままの状況が続けば私はあなたからエネルギーの供給を受けれなくなり、行動不能…戦えなくなってしまいます」
「鳶旺との戦いは避けられないということか」
「相手は無効化能力を持っています。本来の無効化能力持ちのあなたなら、鳶旺からその能力を奪還出来るチャンスはあるかもしれないですが…時間が限られてきています。
次に症状が出たらかなり危ないんですよ!?かなり命懸けになります。それでも戦うと」
「それでも…構わないよ」
「無茶だけはしないで下さい。大人しく寝てないと体にかなり響きます。それだけ鼎さんは危ない状況にあるんですから」
鼎は悔しかった。他の隊員は最前線にいるのに、あの「能力」を敵に奪われたことで体調が悪化するなんて…。
もし、相棒の鷹稜が行動不能になってしまったら…。
第47話(下)へ続く。