某日――
本部はお昼時。各々ランチタイムというわけで。本部には食堂と休憩所がある。

ゼルフェノアの人達は好きな場所で食べれるというわけだ。室長は司令室で軽く食べることが多い。
解析班は持ち場の部屋で食べてることがほとんど。


お昼時の休憩所。時任は鼎の弁当を見る。時任はびっくりした様子。


「き…きりゅさん…」

「…?どうした」
「キャ、キャラ弁じゃないですかそれ。しかも可愛いっすね。きりゅさんが作ったのー?」
「これか?鷹稜(たかかど)が作ったんだよ。私は目立つの嫌だと言ったのに、メルヘンなもんを作ってきたな…」
「鷹稜って、あのきりゅさんの相棒のマジシャンみたいな対怪人用ブレードっすよね?」
「ブレードで人間態はマジシャンだ。あいつ、料理めちゃくちゃ上手いんだよ…」


「い、意外だ…!」

「私は火を克服したとはいえ、火が苦手なことには代わりないから助かってるがな」
「鷹稜さんの料理、食べてみた〜い」
「近々鷹稜にリクエストしておくか?『お前の料理が食べたい隊員がいる』って」

鼎の声は心なしか嬉しそう。


「…え?私の料理を食べたい隊員がいるんですか?」


鷹稜はきょとんとしている。どうやらまだ信じられないらしい。
「さすがに私の部屋に呼ぶのもあれだから、本部の食堂を借りることにしたぞ。お前の料理を食べたい隊員は1人じゃないんだ。何人もいる。1週間後にでも食事会でもしたらどうだ?」


食堂貸し切りで食事会…!


鷹稜はぱああっと明るくなったように見えた。鼎が呟く。

「…わかりやすいやつ」
「そんなに私、わかりやすいですか!?」
「オーバーすぎるぞ、リアクションが…」



「そんなことあるかいな!?…おいおい鼎、それ本気で言ってんの!?」
宇崎が半信半疑で聞いてきた。

「本気だが?食堂は昼時以外は使われていないだろう、だから時間をずらして借りたい」
「いやまぁ…いいんだけどさぁ。なんなら鷹稜連れてきて。本人?に聞かないと許可は出せないよ」



――数日後。

「食堂借りる許可下りたの?きりゅさんすごいじゃないっすかー!」
「すごいのは私じゃなくて、鷹稜だから…。あいつの熱意には負けたよ…」

「じゃあ、鷹稜さんの料理食べれるんですね!?」
時任の目がキラキラしてる。
「鷹稜が言ってたんだが、作って欲しい料理ジャンルのアンケート取りたいってさ。和洋中以外も作れるよ。最近はお菓子作りもチャレンジしてるからヤバい」


「…もはや料理人じゃないっすか〜。鷹稜さん、対怪人用ブレードなんすよね!?」
「だんだん人間臭くなってきているよ…。私の部屋に住み着いてるしな…。
鷹稜はブレード状態で保管していたんだが、決戦後そこそこ平和になって暇をもて余しているみたいで…なぜか主夫に覚醒した」


「…なんじゃそりゃあ〜〜。同居人が自分の武器って、複雑じゃない?」
「…いちか、慣れたから…。以前もあったからこれ。和希や彩音もわかっているから」


鼎は以前も同じようなことがあったので、鷹稜には慣れてしまっている。



暁家。晴斗は陽一から燕暁(えんぎょう)について聞いていた。

「燕暁と恒暁(こうぎょう)が姉弟みたいなものって、どういう意味なの?
恒暁作った人は室長だよ?どういうことなの?」
「黎明期の話をしないとならないかー…。父さんが現役時代の話になるけど、いいかい?」



恒暁と燕暁の繋がりはゼルフェノア黎明期にまで遡る。


晴斗の指摘通り、作った人間は違う。
晴斗の恒暁は宇崎室長(司令)が、陽一の燕暁は蔦沼長官(当時は司令)が作っている。日本刀型ブレードということでベースは日本刀。そこから対怪人用の処理や調整を施されて「対怪人用ブレード」となる。

日本刀がベースということは、当然刀鍛冶がいるわけで。


どうやら恒暁と燕暁のベースとなった刀を打った人は同一人物だとわかった。陽一も名前はわからないんだとか。
その刀鍛冶の名前を知るものは蔦沼長官くらいらしい…。


「蔦沼じゃないとわからないかもね」
「そ…それって、長官じゃん…」



某日。鷹稜はリクエストアンケート結果を見てウキウキしていた。


「お前、楽しそうだな。結果が出たのか?」
「はい!アンケート調査で洋食がダントツで…あぁあ、嬉しいです…!」

鷹稜はめちゃくちゃ嬉しそう。鷹稜は外出時の眼鏡姿に変化するとこんなことを言い始めた。


「ちょっと買い出しに付き合って下さい。作るの6人ぶんなんで、1人じゃ荷物持てないんですよ〜」
「食事会は明日だったか?」
「明日です!」

「鷹稜…私は身体に負荷がかかりやすいんだ。あまり重いものは持たせるなよ…」
「そこは大丈夫ですよ」


本当にこいつは大丈夫なのか?


「なんで俺が助っ人に来なきゃならないのよ!?」
御堂、若干イライラしてる。

「すまない、和希を呼んだのは私だ。鷹稜のわがままにちょっとだけ付き合ってくれないか」
「まぁ、鼎の頼みならしゃーないな〜」


ちょっと変な面子でスーパーへ行くこととなった。
鷹稜は外出時の姿なので怪しまれないが。





番外編 (下)へ続く。