これは本編最終回・鳶旺(えんおう)決戦から数ヶ月後のある一般市民視点多めの話。



ゼルフェノア本部では鼎が司令補佐となり、「仮面の司令補佐」として話題になっていた。
さらにその鼎が世間に仮面の理由を公表したことで、異色の司令補佐はしばらくの間落ち着かない日々を送るハメに。


そんなニュースを冷めた様子で観ている青年がいた。
一般市民の菅谷恭平である。

恭平はネットでゼルフェノアの公式サイトにアクセス、「紀柳院鼎」について調べてみることに。


前々からずっと気になっていた。この「紀柳院鼎」とかいう「仮面の女」、一体何者なんだ?
組織のサイトを見ても、彼女については最小限の情報しか記載されていない。

検索サイトでも調べてみたが、詳細が出てこない。


恭平はネット掲示板に書きこみをした。
『特務機関ゼルフェノアの紀柳院鼎本部司令補佐についての情報求む』


どうやら同じような疑問を持っていた人達はいたようで、すぐに返信が来た。

『彼女について調べている者です。詳細が出てこないのはおかしい。
本人が公表した顔の大火傷は事実でしょう。
それらしき事件が12年前に起きているのですが、名前が違う。何かある』
『その事件とは何?』

『12年前の怪人による連続放火事件を調べてみればいい。当時の記事が出てくる。その8件目がそれらしいんだが』
『8件目?』
『都筑家が犠牲になったんだ』


都筑家?


恭平は情報提供者にお礼を書き込むと、早速その事件を調べることに。

あっさりその12年前の怪人による、連続放火事件の新聞記事やネット記事が出てきた。
8件にも及ぶ事件で7件目で負傷者、8件目では犠牲者が出た悲惨な事件だ。


これと紀柳院鼎がどう関係してるんだ?
恭平は色々調べてみるも、空振りに終わる。



ある日。恭平は鼎と隊員2名が街中を歩いている姿を目撃。
どうやら彼女は新たに作られたシェルターの見学に来ていたようだ。

恭平は冷めた様子。
平和になったのに、シェルター作る必要なんてあるのか?無駄じゃないのか?


恭平はそれでも鼎から目が離せなかった。なぜだろう、気になってしまう。この仮面の司令補佐が。

鼎は自分をやけに見ている青年が気になった。
隊員2人は鼎のガード役の彩音と桐谷。ほとぼりが冷めるまでの間、鼎が制服姿で街中を歩く時はガードをつけろと室長から言われている。


「あ、あなたが紀柳院司令補佐ですか?」
思わず声を掛けてしまう恭平。鼎は彼を見た。
「そうだが?」

あれ?思っていたのと印象が違う…。冷淡な話し方だけど、声が優しい。
彼女は仮面姿ゆえに表情がないはずなのに、どこか憂いがあるように見えたのは気のせいだろうか?


恭平はさらに聞いてみた。


「司令補佐は…平和になったのに、シェルターはいると思っているんですか?」

「怪人の残党がまだ出ている。今は束の間の平和なんだ。シェルターは必要だ。
怪人はいつ現れるかわからない。備えは必要なんだよ」


束の間の平和?怪人の残党って…何?


鼎達は真新しいシェルターへと行ってしまった。
恭平は平和になったという認識だったが、組織の人達は束の間の平和だという事実がまだ受け入れられない。

怪人の残党が出るって…あの恐怖がすぐ側にあるということで…。



鼎達はシェルターをくまなく見ている。

「あの青年、鼎のこと…ずっと見ていたね。なんなんだろ」
「彩音、気にするな。シェルター反対派なのではないか?
…それか…私が何者か疑問に思っている人間かもしれない…。あの事実を知ったら反感を買うかもしれないな」

「反感はないと思うよ。鼎が仮面の理由を公表した時、反響あったじゃない…。戦えない理由も公表したよね。鼎はよくやってると思うんだ…まだ日が浅いのに。プレッシャーに耐えてる」
「…本当は怖いんだ…」

「私達がサポートするから大丈夫だよ」



そんな中、端末のアラートが鳴る。彩音と桐谷は端末を見た。

「怪人出現!?戦闘員の数多いよ!?」



シェルター付近では戦闘員クラスの怪人が複数出現。街はパニックに。
恭平は怪人の出現に腰を抜かしていた。


「…マジかよ……」

体が動かない。近くには怪人がわらわらいる。恭平ピンチ。





番外編 (下)へ続く。