暗い夜道は、幾分か俺の感覚を狂わせる。
どのくらい歩いた?
坂道を登った気がする。
山を登った?
本当のところは分からない。
だって、知らない道だから。
ふと、先輩が足を止めた。
「先輩、着いたんですか?」
「あぁ、間に合ったな」
何に間に合ったのだろう?
「そろそろだから待ってろよ」
いつも、そうだった。
どうして忘れていたんだろう。
「先輩っていつも言葉が足りない」
「あ? そうか??」
「うん、ここに来る時だって、あの時だって…」
「あの時?」
中学の先輩としての最後の日。
卒業式。
「先輩、高校生になるんですね」
「あぁ、お前には世話になったな」
「それは俺のセリフですよ」
何気ない会話。
だったはずだ。
「お前にはもう会わないな」
「は?」
いきなり意味が分からない。
「じゃあな」
「へっ? ちょっとっ! 先輩!!」
「じゃあな〜」
先輩が去っていく。
その時の俺もただただ、小さくなる先輩を眺めているコトしかできなかった。
続く