ケッチャムはとことん現実を描いて現実を語る。
だから前者はホラー作家で、後者はミステリー作家なのだ。



ニューハンプシャーで育ったアーサーとリディアは出会い、結婚し、子供を持った。
しかし順調だった結婚生活もいつしか変わっていく。子供のために、と離婚をせず耐えたリディアだが―…。
愛し、信じることの根本を歪められた子供たち。負の連鎖を描いたサスペンス。


良い本だし、サスペンスとしておもしろいし、夢中になって読めたけど、万人に勧められる本じゃないね。
ケッチャムは「何もそこまで描写しなくても…」と思うほど、克明に描写するので(精神面にしても肉体面にしても)、耐えられない人も多いと思う。
それでも読む価値があると思うけど、「これは厳しい」と思ったら、読むのをやめてもいい。仕方ない。
それぐらい人を選ぶ作家だ。でもそれが彼の個性だと思う。

キングは死の予兆を描くのが好きだけど、ケッチャムは死の余韻を描くのが好きだね。
読みかけの本や冷蔵庫の残り物(これは『ロード・キル』でも見られた)や、『ロード・キル』で殺された大学生のばらばらになった漫画本とか。
いくつか著書を読んでいくと、そんな特徴が見えてくるのも楽しい。

本書のラストで「女性が殺人を犯す理由」をテーマに取材する女性リポーターが登場するけれど、これはそのままケッチャムの一貫したテーマみたい。
『ロード・キル』でも『地下室の箱』でも、思い返してみれば同じテーマが描かれていた。


かなりきつい話だけど、良い。
最後のページの“皮むきした細い木の枝”。その意味を知る時、あなたは何を思うだろうか。

“いわゆる性根の腐った種”も、“なるべくして悪党になった男”も、私は今でもいないと信じているけど、実際はどうだろうな。



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