飛行態の登場から僅か3日後。今度は相模湾近郊で謎の未確認生物が目撃されるようになる。


ゼルフェノア第1海上基地から本部へ通信が入った。


「未確認生物?UMA?それとも怪人?なんなのそれ」
宇崎はきょとんとしている。

「司令、うちでも海自と連携して調査してますが…どうやら未確認生物は2体いるようなんです」
「2体?」

「本部から隊員を出して貰えないでしょうか。うちらは海上戦・水中戦専門ですが、相手によっては本部隊員が必要かと」
「戦艦(ふね)は大丈夫なんだろうなぁ」

「大丈夫です」



その頃、関東某所――


晴斗はバンジージャンプが出来る某施設にいた。なぜこうなったのかというと。飛行態戦後に晴斗がなんとなく発した言葉が発端だった。

「ゼルフェノアの訓練にスカイダイビングでもあるんですか?」…と。


晴斗はハーネスを付けられ、バンジージャンプ台の上にいる。近くには鼎・御堂・彩音のいつものメンバー。
台の上には施設のスタッフがいた。どうやらこの某施設、ゼルフェノアにはお馴染みらしい。


「なんでバンジージャンプなんですか!?」
晴斗はバラエティー番組かよ!…と突っ込んでる。御堂は冷めた反応。

「お前にはスカイダイビングはまだ早いから、とりあえずバンジー体験してこい」
「スカイダイビングやっぱり御堂さん達、訓練でやってるの!?」
「最低1度はやるぞ、訓練で」

晴斗は「えぇ!?」…という反応。だから手慣れていたのか、パラシュートの装着。


そうこうしているうちに時間が来た。スタッフがカウントダウンした。

「3・2・1・バンジー!」

晴斗は叫びながら落下。
「ぎゃあああああ!!あああああ!!」


バンジージャンプで叫ぶ晴斗を見ながら鼎が淡々と呟いた。

「スカイダイビングの方が倍怖いのにな」
「鼎は仮面で視界が狭いからなおさらだろうよ…。あの訓練時、仮面が風圧で外れないようにがっちり固定されてたんだっけ…」
「あれは窮屈だったぞ」


晴斗、なんとか帰還。
「怖かった〜。死ぬかと思った…」
「訓練お疲れ様」

彩音は晴斗に飲み物を渡した。


そんな4人に本部から連絡が。御堂は出た。

「室長、なんですか?」
「お前ら今すぐ本部に戻ってくれ。第1海上基地から要請が入った」
「海上基地から?なんでまた」

「詳しいことは本部で話すから」



本部・司令室。


晴斗達は宇崎から相模湾近郊に出没した未確認生物について聞いた。呼ばれたのは時任・桐谷・霧人もだった。


「なにそれ、ゆーえむえー?」
晴斗はぽかんとしてる。鼎は冷静だった。
「怪人の可能性もあるだろ」
「あ、怪人か」

「とにかくお前らと時任・桐谷・渋谷は第1海上基地へ行ってくれ」
「今回は人数多いんだな…」
御堂が呟く。

「海上戦となると4人じゃ足らんでしょうが。場所も限られてる。渋谷は水中戦に手慣れてるから」
「和希と一緒って久しぶりだな」



ゼルフェノア第1海上基地。7人を出迎えたのは隊長の碇(いかり)。碇は女性の隊長。

「君たちが本部隊員のメンバーね。御堂くん、よろしく」
「こちらこそよろしく」


碇は停泊している戦艦を案内した。
「これが対怪人用に作られた戦艦・エクシアよ」

戦艦エクシア…対怪人用だから滅多に出撃しないと聞いた。ゼルフェノアは対怪人用の戦艦2隻を保有している。滅多に出撃しないため、しばらくの間置物と化してたが。


7人はこの戦艦に乗り込むことに。船は意外と広く、スマート。装備が最新鋭なのもあるんだろう。
中にはクルー達が出迎えてくれた。

「あれ、本部隊員じゃないですか。マジで来たの?助かるわ〜」
こう言ったのは磯崎。他のクルー達も気さくな雰囲気。


「未確認生物が何か、調査も兼ねて出航します。隊長、いいんですか?」
「護衛艦と潜水艦もついてるから大丈夫よ」

今回の任務は海自との連携。護衛艦はバックアップ。
戦艦エクシアと護衛艦2隻は出航。潜水艦もこの任務に当たっている。



しばらくして。時任船酔いでダウン。

「ぐえぇ〜。私、船酔いするんでした…」
時任、ぐったりしてる。彩音は船室に連れていく。御堂は気づかった。

「彩音、時任を頼むわ」
「了解。いちか、無理しないで」


鼎はずっと注意深く海上を見ている。霧人も双眼鏡で監視。

「何もいないな」
「鼎、油断するな。いつ出てくるのかわからないんだから」



さらに時間が経過。雲行きが怪しくなる。

「なんか海面に影が見えるな…なんだあれ」
霧人が気づいた。クルーの監視担当の瀬野も気づいた。

「隊長!海面に異常あり!」

船内が慌ただしくなる。レーダーで見ると見慣れない影が。魚影でも鯨でもない、なんなんだこれは。
潜水艦からも通信が入った。

「海中に植物系の巨大生物がいるとのこと!」
「巨大生物!?」

少しして、海中から蔓のような脚のようなものが飛び出してきた。クラーケンか!?


出てきたものはネオメギド2体が合体し、水に特化した水棲型だった。

「怪人じゃねぇか!?でかっ!!」
御堂は思わず叫ぶ。巨大化したネオメギドは蔓を展開させ、晴斗と鼎を狙う。鼎はブレードを抜刀。


船でも砲撃を開始。クラーケンのようなネオメギドは船を沈めようとする。激しい揺れと攻撃に今は耐えるしかない。
甲板にいた晴斗・鼎・御堂・霧人は時々海に投げ出されそうになる。今回は救命胴衣を着ているためか、少し動きにくいが。

「なんだよこの化け物…」
御堂達は万事休すか?…という流れになりそうで。潜水艦は魚雷を発射、ネオメギドにダメージを与える。戦艦も砲撃で厄介な蔓と戦っていた。護衛艦もバックアップしてる。


この巨大戦は長引きそうな雰囲気が漂っている。



霧人は敵の分析をしていた。蔓が厄介だな…。こんだけ巨大になると…。

鼎は銃撃。晴斗もなんとか攻撃するも、まるで効いてない。相手が巨大なものあるが。



そこに禹螢(うけい)が姿を現した。空中に浮いている。

「ネオメギド、分離しろ」


主の命令に巨大化した怪人は通常サイズになり、分離。分離した怪人は戦艦に乗り込んだ。ターゲットは晴斗と鼎。
禹螢も乗り込み、鼎にじわじわ迫る。

「久しぶりだな、仮面の女。また会えて嬉しいよ」
「お前はあの時の…」
「覚えていたのか。俺は『禹螢』というんだ。今度はあんたを殺しに来たよ」
「禹螢…だと…」


禹螢はじわじわ接近、鼎の仮面を強引に掴む。呼吸穴が塞がれた上に視界が半ば閉ざされる。
「どうだ?苦しいか?苦しいよなぁ?」

禹螢はニヤニヤしてる。御堂は禹螢に攻撃。
「鼎から離れろ!」
「嫌だね」

禹螢は器用に避けながらも、鼎を痛めつけていた。鼎は手探りで禹螢に反撃するも、効いてない。
「そんな攻撃じゃ意味ないよ?さらにいたぶってやろう」

禹螢はギリギリと鼎に圧を加える。鼎は苦しそうな声をあげる。
「やめろ…!やめてくれ…」
「あんたの能力が欲しいんだよ」
「貴様…」


禹螢は晴斗の攻撃も交わしている。ネオメギド2体はなんとか船で攻撃出来てるみたいだが。
鼎は禹螢のじわじわした攻撃により、だんだんダメージを受けていた。精神的なダメージだが。


禹螢は鼎の仮面を手放した。鼎は力が抜ける。だが、禹螢は容赦ない。
「油断したか?まだ終わらないぞ、紀柳院鼎」
「何をする気だ…」


禹螢はどこからか、鞭のようなものを展開→鼎の身動きを封じる。晴斗もターゲットなため、鞭で身動き取れなくなっていた。

「なんなんだよこれ!?」
晴斗はギャーギャー騒ぐ。禹螢は冷めた反応。
「うるさいガキだな。こっちは紀柳院に夢中なのに」


「てめー、鼎から離れろって言ってんだろ!!」


御堂も禹螢に挑むが呆気なく攻撃を受けてしまう。

こいつ、強い!


禹螢はニヤリとしながら鼎の仮面に手をかけた。

「また素顔を見せてくれよ」
「断る」
「じゃあ力づくで」

「それだけはやめろ!!やめろよ!!…やめてくれ……」


鼎は切実に懇願していた。声が悲痛だ。2年前と同じことが起きようとしている…。
御堂は禹螢にタックルをかました。禹螢は一瞬怯む。御堂はその隙に鼎の鞭を切り、船室へ逃げろと言った。

鼎は泣きそうになっていた。
「俺が食い止める。鼎は逃げろ」
「御堂…」

御堂は晴斗の鞭も切る。
「晴斗も一時、撤退しろ。船室へ逃げろ。ここは俺がやる」
「御堂さん?」
「早く逃げろ!お前ら2人はターゲットにされてんだ」


船室。鼎は怯えていた。
クルーの人達も2人を守る体勢に入っていた。銃を構えて。

「私たちが全力で守ります。怪人はまだ撃破出来てないのが厳しいですが」
「ありがとう」



御堂vs禹螢の戦いは激化していた。





第42話(下)へ続く。