闇に侵食された中での戦いは6日目に突入。鳶旺(えんおう)戦は不定期にやって来るが、今が正念場といった状況。

市民達は避難情報やニュースを見て不安になっている。被害の出ていない地域でも闇に侵食されているため、朝が来ない。



暁家。晴斗の母親・朱美はニュースを見てかなり不安になっていた。

「晴斗と悠真ちゃん、今戦っているのよね…」
朱美の表情が曇っている。父親の陽一も不安だが、優しく語りかけた。

「朱美、鼎のことを『悠真』と呼ばない方がいいよ…。彼女は『紀柳院鼎』として生きてるんだから」
「あなた、臨時隊員として召集されてないみたいだけど…。何が起きてるのかしらね…」
「呼ばれたらすぐ行くさ」



鳶旺による闇の侵食は晴斗のブレードの共鳴による攻撃により、侵食はようやく止まる。闇の侵食は日本をまるまる飲み込んでいた。世界規模はギリギリ阻止出来たが、日本の危機には代わりない。


共鳴作用なのか、混線していた通信が通常に戻る。


「お前ら聞こえるか!通信が回復した!」
宇崎の声だった。

「ブレードの共鳴作用で闇の侵食が止まった。後は鳶旺を倒すだけだが、鼎の戦闘制限時間が危うい。
二階堂は鼎を庇いつつ、アシスト・晴斗は周りを気にせずに鳶旺と戦え!!2つのブレードが鍵みたいだ!それも晴斗じゃないと威力は発揮出来ない!!」


彩音は時計を見た。鼎が戦い始めてから約10分経ってる。

10分経ってる…。


晴斗はとにかく攻撃力を上げた2つのブレードで一気に斬りかかり、時には蹴飛ばし次々攻撃。
攻撃力倍増の恒暁(こうぎょう)と鷹稜(たかかど)の刀身は太陽の光を思わせるような、暖かい光に変化。

「うりゃあああああ!!」
晴斗は体力バカな上にタフなため、ちょっとのダメージくらいは平気。
鳶旺は枝分かれした赤黒い棘を縛るワイヤーを無理やり切ろうとするも、ギリギリ締め付けられている。


だが鳶旺は怪人態。棘なんてなくても非情な攻撃が可能。鳶旺は鼎にターゲットを定めた。彼は手を伸ばし、鼎の仮面を塞いだ。

鼎は一瞬パニックを起こすも、鳶旺の手を無理やり剥がそうと必死にもがく。
「もがくから苦しむだけなのに」
「…うるさい…」

鼎の声が低くなった。鼎は仮面の呼吸穴を塞がれ、苦しそうだ。彼女が苦しそうにしているのは戦闘制限時間が迫っているのもあった。鳶旺はそこを狙った形。


二階堂は義手を展開→銃撃と雷撃を同時に放ち、鼎を救出。
「紀柳院さん!大丈夫でしたか!?」
「二階堂…助かった」


晴斗はダメージなんて気にせずにとにかく攻撃を重ねている。

鼎は時々咳こむように。制限時間が刻々と迫ってきている。持ってあと5分あるかないか。



本部では宇崎が囃と杞亜羅(きあら)にあることを伝える。

「うちのドローン兵器を使う時が来た。対怪人用だから人間には害はない。囃、お前が操作しろ」
「ドローン兵器?」
「長官が秘密裏に作ってたらしいんだよ」


あの長官のことだからな…。んなもん作っていたのかよ!

「じゃ、よろしく」


よろしくって軽いよなぁ…。囃は渋々引き受けることに。



晴斗vs鳶旺はさらに激化。


「鼎さんに手ぇ出すなよ!あんなことして許さないからな!!」
「まだやるか」

「あぁ、倒してやる」


そこに通信が。
「晴斗、返事はしなくていい。ドローン兵器が援護するが人間には害はない。晴斗は一気に叩け」

ドローン兵器!?んなもんいつの間に作ってんだ!?
次から次へと作るよな〜、この組織。


「うわぁ!!」
晴斗は隙を突かれ、攻撃を受けた。鼎は御堂の銃を使い、援護。

「晴斗…まだ諦めるな…!」
「鼎さん、無理しちゃダメだって!!」
「私にだってプライドがある…。鷹稜をよこせ」


…え?


「いいから鷹稜をよこせ!!それは私の相棒だ。相棒なんだ」
鼎の声が悲痛になる。晴斗は鷹稜を渡した。鷹稜は鼎の手に渡ったと同時に光がさらに強力に。

「晴斗、一気に行くぞ。同時にやらねば倒せない。鷹稜もそう言ってる」
「鼎さん…わかった。同時にやればいいんだね」


鳶旺は2人を叩きのめそうとするが、そこにドローン兵器が。囃が操るものだった。
ドローンは鳶旺を狙い撃ち。通信から囃の声が。

「早くとどめを刺せ!!時間がないだろ!紀柳院の時間がないっての!!早くしろーっ!!」


晴斗は鼎を見た。かなり消耗していた。
鳶旺も大ダメージを受けている。今しかない。

「鼎さんっ!!」
「行くぞ!!」


2人は同時にブレードを最大出力まで上げる、鼎はかなり消耗しているがなにがなんでも鳶旺を倒したかった。


頼む…体よ持ってくれ!!


2人はほぼ同時に鳶旺に突き刺し、撃破。鳶旺の最期は意外とあっけないものだった。

鳶旺撃破と同時に闇に侵食された場所に光が戻る。
約1週間ぶりに陽の光が街に戻った。



戦闘後。鼎は制限時間ギリギリまで戦ったせいもあり、ふらっと倒れた。


「鼎さん!?返事してよ鼎さん!?」

晴斗は泣きそうな声を上げる。御堂と彩音も駆けつけた。
「鼎!しっかりしろ!!目を覚ませ!!起きろよ!!」


御堂も声が震えてる。やめてくれよ、鼎が死ぬなんてそんなこと…。
彩音もなんとか冷静になりながらも鼎の身体を診ている。

「早く搬送しないと危ない。もう…身体は限界来てたんだね…。よく頑張ったよ…。
もう毎回毎回心配させてさ…。無茶するんだから…」


そこに組織のドクターヘリが到着。ドクターヘリってよほどのことだ。

「ここからは我々ゼノク医療チームに任せて下さい!紀柳院さんは必ず救います!!」


ゼノク医療チーム?


御堂は「あの」組織最高峰医療チームの登場に驚きを見せる。
噂には聞いていた。ゼルフェノアにはとんでもない医療チームがいることを。まさかゼノクにいたなんて。


医療チームは鼎を担架に乗せるとヘリに移送、そしてドクターヘリはゼノクへと飛び立った。

御堂は知らず知らずに泣いていたらしい。鼎は搬送時、意識がほとんどなかったと聞いたから。


医療チームに託すしかない。あいつらならやってくれる。組織最強の最高峰の医療チームなら。



本部隣接・組織直属病院。


蔦沼はスペアの義手を南に装着して貰っていたが、それは戦闘兼用ではない通常のもの。

南は蔦沼に伝える。


「長官の戦闘兼用義手、スペアはゼノクにないと聞きまして。スペアが来るまでの間、それで我慢して下さいよ。使いづらいでしょうけど。
あの戦闘兼用義手、めちゃくちゃ高いんだからね!買えばいくらすると思っているんですか!両方とも一気にダメにするとか、長官…少しは考えて下さいよ!
西澤も困り果ててましたよ…」


西澤…振り回してごめん。


「南、紀柳院は無事に搬送出来たのか?」
「ドクターヘリで来ましたから、はい。無事に」

「紀柳院は手術レベルだぞ…あの状態じゃ…。彼女の意向通り、顔の大火傷の跡はそのままにしておけと伝えてある。
手術するのは顔じゃないが…。紀柳院は2度と戦えない身体になるが、命を繋ぐための手術なんだよ」

「それでゼノク医療チームを呼んだんですか。緊急でしょ!?」
「あとは彼女の体力が手術に耐えられればいいんだが…。ゼノク医療チームには天才外科医がいるから大丈夫だろうけど」

「あの人ならまぁ。…ゼノク医療チーム、ぶっちゃけ違法ギリギリでやってますけどいいんですか!?
いかんでしょ!?いや…だから最高峰の治療は受けられるけどさ!組織としてどうなのよ!?」


南の突っ込みが激しい。もはや敬語ではなくなってる。



本部に帰還した晴斗達は複雑だった。宇崎はなんとか話しかける。

「鼎はゼノクに行ったよ。緊急だからあっちの病院にいる。手術は受けるだろうよ。じゃないともう…かなりヤバいらしい。
もう…2度と戦えない身体になってしまったが…」
「鼎は…助かるのかよ!?」

御堂は宇崎の胸ぐらを掴んだ。


「和希、落ち着け。まだ意識は戻ってないが、容態は安定してると連絡が入った。和希、お前そんなに気になるならゼノクへ行ってもいいよ。鼎もああ見えて寂しがり屋だから」

「…いいのか?」
「戦いは終わったんだ。しばらくは平和だろう。
被害は甚大だし、後始末はしないとならないけど和希がいなくてもなんとかなるから」

「そうだよ!御堂さんは行くべきだよ!きりゅさんのところへ!!」
「時任…お前…」
「あたしらがいるから本部は大丈夫だよ!」
いつの間にか時任は頼もしくなっていた。口調は相変わらずだが。

「そうですよ。御堂さんは行くべきです。彩音さんも行ってはどうでしょうか…。鼎さんの親友でしょう?」


「桐谷さん、そんな私まで行くとか…」
「本当はかなり気にしていますよね。2人とも行ってらっしゃいな」


桐谷は皆の保護者的な存在なせいか、彩音はその言葉を聞いて御堂と共にゼノクへ行くことに。

「和希、彩音。お前らはゆっくりしてなさい。鼎の側にいてやんなよ」
宇崎はふざけた口調だが隊員を気づかってる。



そして某日。御堂と彩音はゼノクへ行くこととなる。


西澤からの連絡で、鼎の意識はまだ戻っていないという。手術は緊急ではないが、意識が戻ることを祈るしかない。


同時期、蔦沼と南もゼノクへと戻っていた。