これは本編の後日談でありながら、過去の回想もあり。
鼎が司令補佐にそこそこ慣れ始めた頃のある日の事件である。
某日。司令室では宇崎が鼎にこんなことを話していた。
「過去に武装集団に本部占拠された話、したっけ?」
宇崎はとぼけたように言ってる。
「武装集団?テロリストか!?」
鼎は大袈裟に反応。宇崎は淡々と続ける。
「鼎がゼルフェノアに入る前、うーんと何年前だっけ…10年前とかそれくらいにあったんだよ。
武装集団による本部占拠。鼎、敵は怪人だけじゃない。人間もいる。この組織をよしとしない反乱分子もいるからねー。…人間の方が厄介だよ」
「なぜそれを今、話したんだ?」
「鼎が俺の補佐官になっただろ?端から見たら鼎が司令に見えるかもしれない、もし…武装集団が狙うとするならお前が危ないかもな」
「セキュリティは万全なのか?」
「あぁ。有事があったら自動的に警察に連絡が行くようになってるし、防弾・防火シャッターが降りるようになっている。
場合によってはシールドも展開するし、警備員も多いでしょ。怪人案件だとセキュリティシステムはちょっと違う起動をするんだけど、人間絡みの案件だとそんな感じなの」
「本部にあるあの塔はセキュリティ用なんだよな?」
鼎は本館にそびえる塔を思い出す。
「…そ。あれは本部のセキュリティを管理している管理塔だよ。あそこに警備員が2人、常駐していて本部のセキュリティを管理している。
支部やゼノクにも管理塔はあるよ。心臓部は司令室だと思われがちだが違うんだよね。司令室でもセキュリティ操作は出来るんだけどさ。こっちはサブなの」
なぜ、室長は武装集団の話をしたんだろう。
過去にそんなことがあったなんて知らなかった。
本部・休憩所。鼎はベテラン隊員の桐谷にその当時のことを聞いていた。
「あぁ、ありましたね〜。10年前だったかな。あっという間に制圧されて私達は手が出ませんでしたよ。
被害はありましたが、犠牲者は出ませんでした」
「過去にそんなことがあったのか…」
約10年前・某日。ゼルフェノア本部は正体不明の武装集団により、占拠されてしまう。
幸いにも犠牲者はなかったが、被害はあった。
人間による本部占拠はゼルフェノアに爪痕を残した。怪人による本部襲撃は度々あるが、人間相手となると…。
ビルの屋上からゼルフェノア本部を眺める、とある黒ずくめの武装集団がいた。全員顔は黒いガスマスクで見えない。
偽のゼルフェノアの制服を着た者もちらほらいる。こちらも顔は角度の関係で見えてない。
彼らはマシンガンを構えていた。その武装集団のいる場所の下にはゼルフェノアの車両を装った、車が。
「リーダー、ゼルフェノア本部どうします〜?襲撃しちゃう〜?」
生意気な女の声。リーダーらしき男が言った。
「襲撃?ここは占拠だろ。派手にやっちまおうか」
「本部には仮面の司令補佐・紀柳院鼎がおりますね〜。彼女には危害を加えない方向なんだっけ?」
「紀柳院には手を出すな」
「はーい」
彼らの目的とは、一体。
本部では時任が何かに気づいたようだった。
「あれ、今入ってきた組織の車…。なんか怪しくない?気のせいかなぁ…」
遠目なのでわかりにくいが、それはあの武装集団が乗り込んでる偽の組織車両。
この武装集団はかなり奇怪というか、なんというか不気味なのである。
そして、白昼堂々事件は起きた。
特別編 (1)へ続く。