哀しくなると、遠くを見る癖がついていた。いつからか。
遠く、ずっと遠く、私の知らない世界に何かを見つけようとしているらしい。よく、解らない。でも、少し落ち着くことは確かだ。
暗闇の中を走る車の電飾。あそこはハイウェイだから、きっと凄く速いんだ。遠くからぼんやりと見つめる私の眼には、それはひどくゆっくりと写る。闇に浮かぶ、光る熱帯魚みたいに。
夜空の淡い光が映し出す私の影は、今日も、いつも、小さい。光りがない闇夜なんかは、その影さえない。私は、居ない。誰も、居ない。そんな錯覚に安心する、そして少しずつ沸き上がってくる恐怖。
身体の先が冷えてきて、温もりが恋しくなる。帰ろう、はやく。
帰らなきゃ、はやく。
また、夜が来た。
考えなければいけないことを、疲れや、憂いから、考えようとしない。
ぐるぐると、気が付けばいつの間にか、時計は回っている。
恐らく来るであろうこれからのために、立ち向かわなければ。
最近は、心と言葉が裏腹で、困る。
窓を開けると、当然街の賑わいが強くなります。風はあまり感じませんが、カーテンが揺れ動きました。手にかかる光りがとても温かいです。遠くの空からヘリコプターの飛ぶ音がします。もう十分寒いのに、麦わら帽子を被ったおじさんの姿が微笑ましいです。
こんなに温かい日は、もう今年は最後かもしれません。
それくらい、今日は良い天気なのです。
それだけなのですが、それだけで優しくなれました。