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第32話(下)

2回目の元老院の長・鳶旺(えんおう)戦から数日後。鼎の病室に晴斗と彩音・御堂が訪れる。

「鼎さん、退院決まったって本当!?」
晴斗、ちょっと声高め。
「あぁ。怪我もだいぶ回復したし、ようやく目処が立ったんだ」
「いつになるかわからないけど、これで一緒に本部に帰れるね」

彩音もどこか安堵している。御堂はこの間のことを聞いてみた。


「鼎、数日前にあったあれ…なんなんだ?お前の鷹稜が独りでに動いてたやつだよ」
「あれか?…どうやら私も晴斗同様、能力(ちから)に目覚めたらしいんだ」


なんだって!?
じゃああの時の光は…。


「間接的に戦ったことになると『北川さん』が教えてくれた」
「北川…司令?北川だと!?あの人…鼎に会いに来てたのか!?」

御堂、意外な名前を聞いてちょっと動揺。

「あぁ。北川さんは長官に要請されて来たと言っていた。…私を陰ながらに見守っていたと聞いて…」
鼎、ちょっと声を詰まらせてる。思い出したのか、泣いている?


「そっか。鼎のことを陰ながらに見守っていた人がいたんだね。まさか…北川元司令だなんて。
私もノア時代、北川さんとはちょいちょい会ってたよ。私がノアに在籍していた時に鼎のところに行ってきてと言われたの、北川さんからだったんだ」

彩音がしれっと重大なことを言ってる。


「彩音…それ初めて聞いたぞ!?私と彩音が出会ったのは北川経由だったのか!?」
鼎、驚きを見せている。


「そうなるね。今だから言えたんだ。黙っていたわけではないんだけど…びっくりしたよね」
「当たり前だろ。びっくりした…そんなことがあったなんて…」

鼎、まだ動揺してる。
親友との出会いに北川が絡んでいたなんて知らなかった。



本部・司令室。


「鼎の退院決まったのか〜良かった。いつ頃お前ら本部に帰れるの?時任と霧人が首を長くして待ってるぞ〜」
宇崎はいつもの調子で御堂と話してる。


「元老院の野郎、しつこいよな〜。長官と西澤から聞いたんだが晴斗と鼎の能力奪おうとしてるって、マジ?鼎が能力(ちから)を発現したことで危機は免れたみてーだが」
「鐡のやつが言ってたぞ。あいつら鐡一派は元老院と敵対しているぶん、相手のことを熟知してる。
今は同盟関係にあるから色々教えてくれて助かるよ」

「そういうメリットあるんかい…」
「とにかくお前らの帰り、待ってるからな」


電話が切れた。このまま順調に回復すれば鼎は1週間後に退院出来る。



ゼノク・司令室。

蔦沼はある特命を北川に出していた。北川とはリモート中。北川はどこにいるかはわからないが、蔦沼と話してる。


「北川。次の任務を出しておくよ。紀柳院のためにも受けてくれるよね?」
「長官、それ脅迫ですか」
北川、真顔。

「そんなわけないでしょ〜。元老院撃破には北川の力が必要なんだよ。協力しておくれよ〜」
「わかりましたよ。…で、何ですか」


蔦沼はニコニコしている。

「暁と紀柳院の能力(ちから)を高めるために、ちょっとやって欲しいことがあるんだ」
北川は察した。

「その任務、受けましょう」
「頼もしいねぇ」



それからしばらく経って。鼎は退院した。鼎は無茶しやすいからと、西澤からオーバーワークするなよと釘を刺されたが。


「鼎さん、おかえり!」
晴斗は思わず駆け寄る。

「待たせたな」
「鼎元気になったのか。良かった良かった。もう、無茶すんじゃねぇぞ」

あの口の悪い御堂が優しい。彩音も声を掛ける。
「これで皆で本部に帰れるね」
「本部へ帰る日はすぐではないんだろう?」

鼎は気になったことがあるのか、聞き返した。
「すぐなわけないじゃん。あと3日…私達はゼノクにはいるから。鼎も話したい相手、いるでしょう?まだ時間はあるよ」
「彩音…ありがとう」



翌日。鼎はゼノク東館にいた。流葵(るき)と話すために来た。
流葵と話すのは久しぶりな気がする。


「紀柳院さん達、あと2日で本部に帰るんですね。寂しくなります…」
「また会えるよ。流葵…いつでも会えるから」
「そうですよね。私も治療頑張ります。まだ仮面は外せそうにはありませんが…無理しない程度に」

「無理して仮面を外す必要はないだろう。流葵はずっと元老院に洗脳されていたんだ。ゆっくりと行けばいい」


流葵は肩の力が抜けたようだった。

そうだよね。ゆっくり治療すればいいんだ。ゼノクの人達も優しいし、良くしてくれる。ゼノクでは友達も出来た。


鼎と流葵の会話はしばらく続いた。



そして、ゼノクへ派遣された本部隊員5人が本部へと帰る日がやってきた。
組織車両に乗り込もうとした瞬間、流葵がわざわざ見送ってくれた。

「また来て下さいね」
流葵は手を振る。いつの間にか西澤と蔦沼まで見送っていた。



そして本部。晴斗達の帰りを待っていた人達がいた。時任と霧人だ。
5人は久々に本部へ入る。

すると時任がタックルするのかというくらいには猛ダッシュしてきた。

「みんな〜!おかえり〜っ!!」
時任の猛ダッシュは明らかにタックルする体勢。御堂と鼎はひらりと交わした。晴斗は時任の動きを読めずにタックルを受けることに。

「ぐわーっ!!」
晴斗、突き飛ばされた。

「暁くん、読めてないなぁ」
時任はけろっとしてる。
「だからといってタックルしてくんなっ!」
「いつも通りに戻ったっすね。話は聞きましたよ。元老院のやつ…相当厄介だって」
「おい、いちか。まだ敵は倒したわけじゃねーぞ」

御堂、割り込む。
「わかっていますよ。鐡一派が同盟組んだ時はびっくりしたけど、鐡さんめちゃめちゃ強いっすね。
室長もあの戦いを分析したら、鐡の方が元老院の長よりも強いって」


鐡の方が強い!?

確かにあの時、鐡は人間態・鳶旺(えんおう)は半怪人態で戦っているように見えた。
鳶旺はヤケになったのか、半怪人態だったが鐡はまだ余裕を見せていたし…。



異空間・元老院。

「絲庵(しあん)、計画を進めるぞ」
「計画を進めるんですか!?」

「鐡がゼルフェノアと組んでいることが判明したからな。異空間には鐡一派は来ないだろう?
館の例の部屋…準備は進めているかい?」
「はい…着々と」

「ならよろしい。鐡との戦いは避けられないな…。計画は進めておくのだぞ」
「御意」


第32話(上)

司令室では緊迫した状況。
「病院側のシールド、持ち堪えられません!そろそろ破られますっ!」
南が叫んでる。蔦沼は冷静。

「シールドの強化はMAXか?」
「MAXにしていますっ!…ですが、あの攻撃のせいで持たなくなってきてますよっ!!」

蔦沼は西澤と南にこう、告げる。
「北川を呼んだのはね、紀柳院の能力(ちから)を発現させるために助言者として呼んどいたの。
そろそろ彼女がいる病院で変化があるかもね」


なんで長官はそんなにも、余裕なんだ!?



ゼノク・病院地下シェルター。
鼎は光を帯びたブレード、それも宙に浮いているものを目の当たりにしていた。


「独りでにブレードが動いた!?」
「君の想いに共鳴したんだろう。間接的にでも戦えるよと『鷹稜(たかかど)』が示したんだね」

北川は助言者として教えてる。



晴斗達がいるゼノク外部では、鳶旺(えんおう)の容赦ない攻撃で病院のシールドがそろそろ破られようとしている。

「晴斗っ!なんとかならねぇのかよっ!シールド破られちまうぞっ!」
御堂から通信が。

「わかってるよ…!こっちもなんとか食い止めてるけど…体力の限界が近いんだよ…」
「病院には鼎がいるんだぞっ!諦めんなっ!!」


鐡は半怪人態の鳶旺と激しい戦いを繰り広げてる。

「能力(ちから)奪ってどうする気だ?ジジイよぉ」
「貴様には教えぬ!」
「今回はあんたを倒すのが目的じゃねーからね。俺はよ」



鼎は鷹稜に話しかける。
「鷹稜…私は仲間を守りたい…。直接戦えなくてもいいから…守りたいんだ」


鼎のブレード・鷹稜はフッと姿を消した。


「ブレードが消えた!?そんなことあり得るのか!?」
鼎、動揺してる。

「鷹稜は発現した君の能力(ちから)を媒介したんだろう。大丈夫。このシールドは守られたままになる」
「病院のシールド、破られかけてるのに!?」



ゼノク外部では不可思議な現象が起きていた。
病院に張り巡らせたシールドを破ろうとしている鳶旺の赤黒い棘に対抗するかのように、鼎のブレード・鷹稜が突如出現。

鷹稜は眩い光を放ち、シールドを破ろうとする棘を浄化する。


「あれ…鼎のブレードだよな…」
御堂、固まる。
「鼎さんのブレードがなんで独りでに!?」
晴斗も驚きを見せる。


鷹稜単体の強力な浄化は鳶旺の赤黒い棘を次々浄化、無効化した。
これには鳶旺も想定外だったようで、ダメージを受けている。

「都筑悠真…能力(ちから)が発現したか…!」
鳶旺は悔しげに声を出す。鐡はこんなことを言った。

「能力が発現した以上、あの2人に簡単には手を出せなくなったな。ジジイ。残念でした」
「…鐡ぇ…!」


鳶旺は人間態へと戻り、異空間へと消えた。鳶旺はダメージを受けていた。
元老院の攻撃が止まったことで、病院に張り巡らせたシールドはギリギリ破られずに済んだ。



ゼノク・病院地下シェルター。
鼎のブレード・鷹稜は何事もなかったかのように主の元へと戻った。その時点で光は消えている。


「鷹稜…帰ってきたのか」
鼎は優しい声で愛刀に話しかける。北川はこんなことを言った。

「俺は君の『助言者』として来たんだ。今回は紀柳院の能力を発現させるきっかけを作るためにね。
君を見守っているのは本当だ。水面下でずっと動いていた」
「北川さん…もう帰るのか…?」


鼎は帰ろうとする北川に声を掛ける。声が泣きそう。

「俺とはまた会えるから泣かないで。声…泣きそうになってた」
北川は鼎の仮面の頬に優しく触れる。鼎は北川の手に触れた。


「また…会えるのか…?」

「来るべき時に俺はまた来るから、心配しないで。紀柳院は繊細だからな…なんか…泣かせたみたいでごめんな」
「私はあなたにまた会えて嬉しかった…。あの時の恩は忘れていない…。居場所を失った私に場所をくれたのだから…」



そうか…紀柳院はあの事件後、ずっと独りだったから恩を感じているんだね。


全てを失い、居場所がなかった紀柳院は「都筑悠真が生存している」という事を元老院から隠すために、組織直属の施設に匿う形になった。本人には住居と生活面のサポートを提供するような形で。
組織直属施設なので、ゼルフェノアのバックアップを彼女はこの時から受けていた。

鼎が匿われた施設はゼノクとは違う施設で、一見するとアパートのような場所。違うのは「怪人被害者組織ノア」職員や看護師が常駐していた点だ。
この施設は怪人被害で居場所を無くした人達が入居していた。小規模なゼノクのようなところだ。


鼎は火傷のダメージから生活面のサポートが必要だった。目に受けた火傷のダメージが深刻なのもあり、仮面は必要不可欠に。
鼎が施設に入った当初は慣れない仮面生活に苦戦していたと聞く。狭い視界に慣れず、よくぶつかっていた。


ゼルフェノアにはこのような小規模な組織直属施設も点在する。ノアが解体され、ゼノクに移行した現在でも怪人被害者のサポートは手厚い。
組織直属の小規模施設はアパートタイプやシェアハウスタイプなど、形態も様々。



北川は鼎の頭に優しく触れた。

「紀柳院…泣いてるのか?」
「…次、いつ会えるかわからないんだろ?だから……」

鼎はなんとか声を絞り出している。聞いてるこっちも辛い。
明らかに紀柳院は仮面の下ですすり泣く声がしたから。


「紀柳院には仲間がいるだろ?もう『独り』じゃない。俺がいない間もやれていたじゃないか」
「…はい」
「紀柳院…少しは落ち着いてきたかな?」


北川は優しくしてる。いつの間にか鼎の涙は止まっていた。
北川はさりげなく鼎の仮面の紐に触れる。


「北川さん…何を…」
鼎は少し拒絶反応を見せる。

「あれから10年くらい経ったね。君の素顔…見ていいか?顔の火傷の跡がどうなったのか見たいんだ。あの時も素顔…見せてくれただろう?」

あの時…施設に入る前だ。


「…北川さんなら…構いません」
「なんか…ごめんな。本当は嫌なのに…無理しなくてもいいのに」


北川は手慣れた様子で鼎の仮面をそっと外す。角度の関係で鼎の素顔はほとんど見えないが、北川は鼎の現在の素顔を見て思わず目を反らした。

あれから10年くらい経っているというのに…顔の大火傷の跡はほとんど変わっていない…。
怪人由来だからなかなか良くならないのか…。身体の方は跡が目立たなくなってきてるのに…。


「あの…北川さん。私、目に負担がかかるので仮面着けてもいい…ですか…」
「あ…あぁ。そうだったね。紀柳院は長時間素顔になれないんだったね…」


鼎はいそいそと仮面を着ける。そしてうつむく。彼女の気に障ってしまったかな…。


「目のダメージは変わらずか…。不便だろうに」

「そのための仮面ですから。目を保護しなければ外出なんて出来ません。火傷の跡も顔はなかなか良くならなくて…あれからずっと仮面生活を強いられてるから…」
「紀柳院…本当にごめん。デリケートな話に突っ込んでしまって…。仮面事情に関しては詳しく知らなかったんだ。許さなくてもいい…本当に謝るよ」


北川はそう言うと地下シェルターを後にした。



ゼノク・司令室。北川は蔦沼達のところにいた。


「長官…俺、紀柳院を傷つけたのかもしれない…。あの仮面、そんな事情があったなんて…迂闊でした」
「紀柳院は彼女なりに必死に伝えていたんだろう?大丈夫だよ。ただ彼女は繊細だからなぁ…。ああ見えて」


蔦沼は話題を変える。

「あ、そうだ。助言者として紀柳院の能力(ちから)発現のきっかけは作れたんだろ?」
「それは成功しましたね。やはりあの『鷹稜』が鍵でしたよ」

「これで暁・紀柳院、双方の能力が発現したことになる。元老院の脅威からは少しはマシにはなるだろう」

西澤が割り込んだ。
「長官、問題は紀柳院のケアをどうするかですよ。彼女はまだ退院の目処は立ってないし、北川が知らず知らずに彼女を傷つけたとなると…」
「余計なこと、言わなきゃ良かったのかな…」

北川、かなり落ち込んでる。


蔦沼、なんとか勇気づけようとする。
「北川、紀柳院は君のことを慕っているみたいだしそう落ち込むなよ。紀柳院は以前と違って仲間もいる。孤独じゃない」

「…でも彼女…寂しげでした。仮面で顔が隠れてるとはいえ、なんですかねー…背中が寂しそうなんですよ。人前で仮面装着している人間が自分しかいないという、孤独なんでしょうかね……」
「紀柳院は人前じゃなくても仮面姿だよ。目の保護をしなきゃならないから。ゼノクにも人前では仮面姿の人はいるが、事情が全然違うからなぁ。
でも紀柳院は彼女と打ち解けてたから心配するな」


北川、沈黙。

紀柳院は複雑な事情があるようで、彼女も悩んでいるようにも見えた。仲間にも言えない悩みもあるかもしれない…。


北川は気を取り直した。

「そ、それじゃあ俺は帰りますね。また要請あったら来ますから」
「紀柳院のこと…水面下で頼んだよ。ひっそりと支えてあげてくれ。彼女には北川が必要だ」

「…わかりましたよ」


北川は複雑そうにして司令室を出た。





第32話(下)へ続く。


無題

話題:おはようございます。
昨日の拍手10個ありがとうございます。昨夜のマツコの知らない世界、ペンギン可愛い〜。癒されたよ〜。


今日は寒いです。寒波来ましたね〜。外見たら白いものが積もってる…。
夜中、風ビュービュー言ってた。雨→あられ→雪に変わったみたいだ。



今日はおかんが通院で休みですが、町内の病院ではないので親父も一緒に行ってる。おかんが病院終わるまでの間、親父は用事でも足すんじゃねぇの?買い物とか。(他人事)

おかんが行く前に掃除しろ掃除しろとうるさいんで、いない間に掃除してやった。ストレス相当溜まってるんだと思う。



自己満小説32話、ほとんど組上がってる。31話との前後編みたいになったせいかなー。
31話、微妙に修正かけた。色々描写が足りてなかったので。

設定カテゴリー、主人公2人にとってのキーマン的な2人…そろそろ上げようか…。北川さん出たんで。


今さら書いてて気づいたけど、展開がゆっくりだな〜とようやく気づいた。
中盤感はまあまあ出てるが…微妙なところよな…。


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