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第35話(下)

鐡の予想通り、強化戦闘員が市街地に出現。今回は鐡一派が片付けるというのでゼルフェノア隊員は一切出番なし。

「鐡一派が元老院にガチで殴りこみかけてきた…」
晴斗、端末のライブ映像見ながらボヤく。



某市街地。鐡一派の3人はそれぞれ武器を構えていた。鐡は杞亜羅(きあら)と釵游(さゆう)に言う。

「思いっきり暴れてもいいぜ」


杞亜羅は扇子を出すと、戦闘員複数に対して舞を舞うかのように攻撃。
「戦ったの、久々な気がするわ」


釵游は十文字槍を出現させ、鮮やかな槍さばきで強化戦闘員を一気に仕留めてる。
「これで『強化』だと?ふざけんな」

釵游、物足りない様子。


鐡はどこからか刀を出現させた。刀身が紫色のもの。

「さっさと出てきやがれ、絲庵(しあん)」
鐡は強化戦闘員を作り出した相手を既に見抜いていた。絲庵、まさかの鐡からの名指しにビビる。



異空間では絲庵が出るべきか迷っていた。

「長、私は出るべきでしょうか」
「挑発に乗るな。鐡一派の煽りはゼルフェノアの罠かもしれんぞ」


鐡は純粋に煽っているだけなのだが。
「けっ、つまんねーの。おい杞亜羅・釵游。さっさとこいつら叩きのめすぞ。
強化戦闘員を作り出したやつはもう、わかってんだ。元老院のやり方には虫酸が走るんだよっ!」


鐡は絲庵に迫る勢いで次々強化戦闘員を倒してる。
元老院とは違うのは、3人とも人間態だけで戦ってること。
鐡一派は元のスペックが元老院よりも高いことを示していた。これはゼノクであった鳶旺(えんおう)戦でも証明されている。


やがて鐡一派は短時間で強化戦闘員全てを倒していた。

「ぬるいぜ、こんなん。ちまちまちまちま戦闘員ばかり出してねーでそろそろ来いよ、元老院」

鐡はかなり煽っている。それも楽しそうに。



晴斗達は鐡一派の強さに圧倒されていた。今は味方だから頼もしいが、敵のままだったら勝てる相手じゃない!

鐡には彼なりの策があるようだ。元老院を潰すための策が。



本部・司令室。鐡はまたこんなことを宇崎に持ちかけていた。


「強化戦闘員の元締めを倒す!?もうわかったの!?
行動早すぎないかお前ら…」
「司令よぉ、こっちは元老院をさっさとぶっ潰したいわけ。このまま放っておくと、人間界がえらいことになるぞ…?」

半分鐡は脅迫していた。鐡の圧力には敵わない。
鐡はカリスマ性があるだけに余計にな。



ゼノク・司令室。
蔦沼は宇崎経由で鐡一派のことを知る。


「別に良くないか?鐡一派が強化戦闘員の元締め倒すって言うなら、彼らにやらせてあげようよ」
「ちょ、長官あっさりしすぎ!」

「え?いいじゃない。今は鐡一派は味方だけどさ、いつ裏切るかなんてわからないし今のうちに敵同士戦わせておこうってわけ」
「長官もセコいですね…」


この人…時々何考えてるかわからない時がある。長官は自由奔放すぎるせいもあるのだが。


「そいじゃあ、強化戦闘員の元締めの元老院撃破担当は鐡一派に任せるね」

そんな軽いノリでいいのか!?



異空間・鐡一派は久々に異空間へと戻っていた。

「あっさり許可が出ましたね。鐡様」
「杞亜羅、許可も何もあるかよ。あの長官のことだ、こうなるのは予想していたぞ」
「しかし、鐡…よくまあ強化戦闘員を作り出したやつを突き止めたよな」

「釵游、簡単すぎたぞ。元老院は詰めが甘い。こんなんで人間界をどうこうする気らしいから意味わからん」
「鐡も強引な気が…」


「とにかく元締め倒すぞ。強化戦闘員はめんどくせーからな。まぁ、あいつでしょ。作ったのはよ」


第35話(上)

元老院が仕掛けた強化戦闘員戦から約1週間後。御堂達は数人あの路地裏の喫茶店にいた。店は貸し切りにしてる。
店内の客は全員、ゼルフェノア隊員だ。御堂に馴染みのある隊員しかいない。鼎や晴斗もいる。


「よ、よぉ。藤代…。店、再建したんだな。早いな」

御堂、どこか藤代にはぎこちない。

藤代はこう答えた。
「被害が少なかったからね。紀柳院さんが守ってくれたおかげで、怪人にめちゃめちゃにされたわりには大したことなかったよ」
「鼎も来てるぞ。ほら」


御堂は方向を示した。鼎は彩音と共にボックス席にいる。そこだけ女子会みたいになっていた。
スタッフの弥刀(みと)も和気あいあいとしてる。


「御堂、わざわざ貸し切りにしたってことは何かしら話があって来たんだろ」
藤代は感づいている。

「藤代…お前あの時、死んだんじゃなかったのか!?」

「あの状況だとそう思われてもおかしくないよね。あの時、僕は瀕死の重傷だったから」
「瀕死の重傷!?よ…よく生きてたな…」

藤代は少し語気を強めた。
「ゼノクの医療技術で僕は命をとりとめたようなものだから…。ゼルフェノアには感謝してる。ゼノクのおかげで助かったから」

御堂、黙ってコーヒー飲んでる。藤代の淹れたコーヒー、美味しいな。


「ゼノクに1年いたから御堂がそんなにも気になるなら、ゼノクに聞いてみればいい。履歴は残っている」
「お前、何回か手術したって聞いたけどその病院がゼノクなのか」

「…そうだよ」



店は貸し切りだが、そこに藤代の奥さんと女の子が入ってきた。
晴斗達はその方向を見た。

あの人達がマスターの奥さんと子供!?女の子…幼稚園児だって聞いたけど。あ、そうか今日は幼稚園ないのか。


女の子はパパ(藤代)が好きらしく、カウンターへと向かっていく。

「パパ〜、だっこして〜」
藤代の奥さんが女の子に優しく諭してる。
「パパはお仕事中だよ?」
「深雪(みゆき)、今日は大丈夫だよ。店は貸し切りだし、お客さんは全員ゼルフェノアの隊員さんだから」

「ゼルフェノアの隊員がなんでまたここに?」
「僕の友人が話があってわざわざ貸し切りにしたんだよ。岬(みさき)〜パパのところへおいで」

藤代の娘さんは可愛い盛りの女の子。確かに仮面姿の藤代を見ても全然気にしてない。
御堂は思わず岬に聞いた。


「みさきちゃんはパパ、怖くないの?」
「パパはおかおにけがしてるの。こわくないよ。やさしいんだよ。みんなこわいっていうけど、パパはおめんがないといけないからみさきがまもるの」

御堂は一生懸命話す子供に弱かった。そんなこと言われたら…。


御堂はてきとーに口実をつけて店を出た。御堂は複雑そう。
子供があんなん喋ってたら、痛々しいというか。藤代…お前…。


藤代の奥さんと女の子も店を出た。御堂は怪しまれないように藤代親子の会話を聞いた。

「かいじんたおすたいいんさん、いっぱいいたね。パパのおともだちもいるの?」
「いるよ」
「ママ、パパのおかおのけが、なおるといいね」


この言葉に深雪は泣きそうになっていた。パパはもう、顔の怪我…治らないんだよ…。
だから仮面を着けている。やむを得ず。岬にはまだ難しいだろうな…。

御堂も複雑だった。藤代が怪人により、瀕死の重傷を負ったことは本当だったようだ。


喫茶店では鼎と彩音・晴斗がまだ女子会っぽいことしてる。いつの間にか弥刀と打ち解けていた。

「弥刀は藤代が御堂の友人だと知ってたのか?」
「知らなかったですよ。高校時代の友人だって知ったの…つい最近ですし」


藤代親子が去った後、藤代はどこか寂しそう。


「マスター、コーヒーおかわり入りました〜」

弥刀がオーダーを伝えてる。藤代はコーヒーを淹れていた。鼎は藤代を見る。やっぱり…不便そうだ。
仮面で視界が狭いのと、眼鏡の兼ね合いで見づらいんだろうな…。



本部・司令室。
宇崎は蔦沼・西澤とリモート中。

「鼎のやつ、本領発揮して驚いてますよ」
「あの光、浄化だけでなく弱体化させる能力(ちから)もあったのか…。そりゃあ狙われるわけだ」

西澤、妙に納得してる。


「長官。御堂の友人の藤代についてですが…元々彼はゼルフェノア候補生だったって聞きましたよ。何があったんですか。
今は喫茶店のマスターしてるんだっけ。3年前…瀕死の重傷負ってますよね。御堂は死んだと思い込んでたみたいですが」
「あぁ、あれね。藤代はさぁ、適性検査で向いてなかったの。
まさか3年前にああなるなんて誰も予想出来ないからね。顔の負傷は重傷だから大変だったよ。ゼノクに転院させて正解だったよ」



御堂、ゼノクに確かめたいことがあり連絡してみる。藤代はゼノクにいたみてーだが…。


出たのは南だった。

「藤代凌(しのぐ)について聞きたいのか?御堂、彼のゼノクにいた履歴を見てみるよ。…御堂は藤代の…」

「高校時代の友人です。気の知れたやつでした。
あの状況で生きてるなんてまだ信じられなくて…だから確かめたくて。南さん、お願いします」

「わかったよ。彼らしいな。『ゼノクへ聞いてみろ』というのはね」


御堂はかなり複雑そうにしてる。あいつの仮面の下…どうなっているのかも気になるが、あいつの話から察するに重傷…。
ゼノクへ転院したってことはよほどだろ…。



少しして。南から折り返し連絡が。

「御堂、藤代について履歴を発見したよ。彼は3年前、怪人襲撃に遭い瀕死の重傷を負っていたんだ。顔の負傷が酷かったようだ。
ゼノクに転院したのは一昨年。そこから1年、ゼノクにいましたよ」
「あいつ…マジでゼノクにいたのか…。顔の負傷が酷かったって…」

御堂、ショックを隠しきれない。南は続ける。


「うまく言えないが、怪人にズタズタにされたらしくてな。顔の再建手術を数回、している。
御堂は彼に会ったんだろ?あの仮面はそういう意味だ。藤代はもう2度と元には戻らない。人前に出れる限界があれだからね」


人前に出れる限界が…あれ?嘘だろ…?


「御堂…大丈夫か!?」
「あ…あぁ」

堅物の南ですら御堂を気にしているようだった。



「御堂さん、戻って来ないね。どこ行ってんだろ」
晴斗はボソッと呟く。喫茶店には鼎達3人しかいない。

「あの御堂が取り乱すなんて…珍しいよ」
鼎も呟く。藤代はなんだか申し訳なさそうに言った。


「僕のせいかもしれません。御堂とは友人同士だったんです。御堂がゼルフェノアに入ると決まった時は嬉しかったですよ」
「2人は友人同士だったのか…」

「3年前のこと…紀柳院さんは知らないと御堂が言ってました。あの時紀柳院さんは地方任務だったからって」


地方任務…。なんかあったな…。


「3年前…御堂は強敵相手に戦ってました。かなり強かったみたいで御堂も負傷してました。
あまり覚えてないですが…御堂は僕を庇って、負傷して。気づいたら僕は死にかけてたらしくて」
「それで色々あって今の姿になったのか…。娘さんはまだ小さいからわからないだろうに。パパが仮面の理由」
「いや…わかっているみたいだよ。この仮面は『おめん』と言ってるし、僕が顔を怪我してることもわかってる」

「そうなのか…」



鐡一派は宇崎にある提案を出していた。

「お前らがあの強化戦闘員を完膚なきに倒すって、本気で言ってんのか!?」
「たまには俺らにも見せ場をくれよな、司令」





第35話(下)へ続く。


気が進まないけど


話題:ひとりごと
4回目のワクチン予約入れました。そしたら予想した2月じゃなくて、1月下旬になった。

ファイザーだってさ…。不安でしかないわ。



親が打て打てうるさいから渋々予約を入れた感じ。
自分、ワクチン信者じゃないのだが…。そろそろおかしいと気づけ。

実家暮らしのデメリット、これ。上司(親)には逆らえない。
親がコロナ脳でワクチン信者だからなー。あー、めんど。


正直パスしたかった…。


第34話(下)

路地裏にその喫茶店はあった。鼎、2回目の来店。なぜかこの店に行きたくなった。

平日の午後とあって、店内はガラガラ。マスターが「いらっしゃい」と声を掛けたと同時に鼎に気づく。


「君…この間のゼルフェノアの隊員さんじゃないか。制服姿初めて見た」
「ちょっと1人になりたくて…」


鼎はカウンター席に座る。そしてホットコーヒーをオーダー。

この喫茶店の仮面のマスター、名は藤代ということがわかった。年代は自分と同じくらいだろうか。声からするに若い男性。
どうしても…藤代の仮面の上に眼鏡というのが気になっていた。見づらそうで。眼鏡をかけてるあたり、落ち着いた感じなんだろうな。


前回藤代と話をしていた女性スタッフは弥刀(みと)だという。今回も弥刀は藤代と話をしていた。

「マスター、私休憩入りますね〜」
「いいよ。ゆっくり入ってね」


鼎はホットコーヒーを仮面をずらして器用に飲みながら、藤代とポツポツ話をしていた。


「藤代さんは…自分がわからなくなる時ってあるか?私は…仮面姿に慣れたせいで素顔になることが怖くなってしまった…。
仮面は身体の一部だから」

「そう思うなら今のままでもいいと思いますよ。僕も迷ったよ…怪人被害を受けてから、実は手術を何回か受けていて…なんとか今の状態になれたけど、人前では仮面は必要で。
僕はこの姿を受け入れるまでかかってる。今でこそ弥刀達スタッフや、家族が気にかけているからいいんだ」

「家族…か」


鼎、複雑そう。鼎は家族を失ったのもあるが。
藤代には奥さんがいて、幼稚園児の子供もいるという。子供はパパの姿を素直に受け入れてると聞いた。


「僕も仮面は身体の一部だからね。素顔は子供にはとてもじゃないが見せられないよ」

「少しだけ楽になりました」
鼎の声が明るくなる。
「この店、気に入ったのかな?紀柳院さん。コーヒー美味しそうに飲んでたから」


その時、外で激しい音が。鼎は端末を見る。怪人出現の知らせだった。現場は喫茶店からほど近い。

鼎は突如、バタバタし始める。
「君、どうしたの!?」


藤代は聞いたが鼎は聞こえているのか、いないのか、レジにお札を置いた。

「おつりは要りません。怪人が近くに出たんだ!だから店の外に出るなと伝えておけ!!建物の中の方が安全なんだ」
「わ…わかった」


鼎はそう言うと店を急いで出た。弥刀が店の奥から出てきた。
「何かあったんですか?マスター。…マスター?」

弥刀は藤代を見た。手がガタガタと震えてる。
「怪人が近くに出たらしい…」
「マスター、私達がいますから落ち着いて。さっきの隊員さん、なんて」
「建物の中にいろと言っていた。建物の中は比較的安全だって…でも…!」

藤代は数年前のことがフラッシュバックしていた。



鼎は路地裏から大通りに出た。そこには見慣れない戦闘員が少数いる。
ビルの屋上には絲庵(しあん)が。絲庵は戦闘員に指示を出す。

「破壊するのです」
強化戦闘員は人々を襲撃し始めた。絲庵はある程度様子を見ると姿を消した。
鼎は単独、強化戦闘員相手に戦っている。ブレードを抜刀し肉弾戦を交えながらも戦闘員と戦うが…強い。


今まで戦った戦闘員とはわけが違う。


「なんなんだこれは…!」

鼎は苦戦中。少しして、晴斗達も到着。晴斗は超攻撃的な発動をいきなり展開するが戦闘員の強さが格段に上がっていることに気づく。

鐡の戦闘員強化態よりも強い…。


御堂は確実に銃撃するも、跳ね返された。
「なにっ!?」

元老院製の強化戦闘員は容赦ない攻撃を繰り返す。御堂はあっけなく突き飛ばされた。
「これで戦闘員だと…?強すぎる…」

御堂は痛みに悶えてる。鼎はこの状況に緊迫していた。脳裏に過ったのはあの店。鼎はなぜか路地裏へ走る。

「鼎さんどうしたの!?」
晴斗は交戦しながら叫ぶ。
「戦闘員の数が足りない…まさか路地裏か!?」
鼎は嫌な予感がした。



喫茶店ではマスターがそっと窓から外を見ている。弥刀は藤代に促した。

「マスター、いけないって!隠れなきゃならないですよっ!早く店の奥に!」
「今…怪人が歩いていた……。明らかに人間を探してる…」

怪人は一瞬、藤代を見た気がした。刹那、窓ガラスが割れる音が。
藤代は目の前に怪人の姿を見る。彼は怯えていた。

鼎はとっさに強烈な飛び蹴りを戦闘員1体に喰らわせる。怪人は一瞬、怯んだ。


「早く逃げろ!!お前が死んだら大切なもの…全てなくなってしまうだろうが!!」


藤代は鼎の言葉に我に返る。僕が死んでしまったら家族にも会えずに終わってしまう…。
弥刀は藤代を誘導した。

「隊員さん、思いっきり暴れて下さい。とにかく怪人を倒してくれればいいんです」
「わかった」

鼎はブレードに思いを込めた。ブレードは共鳴し、眩い光を出す。



一方の晴斗達は眩い光を見た。

「あの光…鼎じゃねぇか!?」
御堂は思わず声に出す。
「鼎さん!?」


晴斗は周囲の強化戦闘員の変化に気づいた。戦闘員が弱体化しているように見える。
浄化されたのか!?

晴斗達は一気に攻撃を仕掛ける。超攻撃的発動で一気に4体撃破。
やっぱり弱体化されている…。あの光のおかげなのか!?


鼎は喫茶店に乱入してきた怪人と戦っている。浄化と攻撃無効化で敵は弱ってきているようだ。
鼎は喫茶店を壊したくない一心で怪人を外に出す。


「せっかく見つけた大切な場所なのに…ぶち壊すな」

鼎は静かに怒っていた。それに呼応するかのように、ブレードはさらに共鳴。
強化戦闘員相手に鼎は一気に畳み掛けた。とどめはブレードを突き刺した。

鼎は戦闘時間ギリギリだったため撃破後、その場に倒れ込む。
喫茶店から藤代と弥刀が出てきて鼎を介抱する。

「隊員さん、しっかりして下さい!」
「紀柳院さん…まさかそんなわけ…」


少しして、鼎は気がついた。鼎は気を失っただけだった。
鼎は2人によって介抱されていたと知る。

「私を助けてくれたのか…?」
「あぁ。店めちゃくちゃにされたけど、君が一生懸命守ってくれたから」


晴斗達は鼎の姿をようやく見つける。鼎は喫茶店のマスターと話をしていた。
御堂は仮面のマスターを見逃さなかった。

あの人…藤代!?藤代生きていたのかよ!?仮面着けてはいるがあの佇まいと眼鏡でわかる。あれは「明らかに」藤代だ。


御堂は信じられないような反応を見せた。
藤代も御堂に気づいたらしい。


「君は…御堂」
「仮面姿だけどあんたは藤代だよな!?お前…生きていたのかよ!?知らなかったぞ」

「色々とあってね。生きてることを伝えてなかった…。僕は今はこんな有り様だ。
3年前…怪人被害で死にかけた。君はなんとか僕を助けようとしていたね」


「その仮面の下…どうなってんだよ…」
御堂は言葉が少しおかしくなっていた。

「見たいのか?やめておいた方がいいですよ。手術を何度かしてようやくこの状態だからね。
僕の素顔は家族の前でも見せないようにしてるから。子供にトラウマを植えつけるわけにはいかないだろ?」


鼎は御堂と藤代の会話についていけなかった。
御堂は藤代と何か関係してるのか?3年前…私は隊員として慣れ始めた頃だが、御堂に一体何があったんだ?

私の知らない御堂を知ることになろうとは…。
3年前…何があったのかはわからないが、藤代が怪人襲撃で死にかけたことだけはわかった。


御堂の言い方から察するに、藤代は友人とかなんだろうか…。



御堂自身はなんとか自分を落ち着かせているらしかった。

藤代が生きていた!?変わり果てた姿だが、でもあの声・話し方・仕草は藤代そのもの…。なんで生存していることを彼は隠していたんだろう…。


御堂はもやもやしながらも、本部へ戻る組織車両へと乗っていた。
どこか御堂は上の空。

車内がなんだか気まずい。あの御堂さんが黙っているのも珍しいような…。


第34話(上)

異空間では元老院がメギド戦闘員の強化に成功していた。見るからに今までのものとは姿形が違う。
戦闘員とは言ってるが、見た目は中級メギドにかなり近い。

「長、これで鐡一派とゼルフェノアを叩きのめせます。強化に成功しました」
「絲庵(しあん)、よくやった」

鳶旺(えんおう)、上機嫌。



本部・研究室では鼎用の素顔に近いマスクが完成していた。


「彩音、出来たには出来たが…鼎にとっての正解がわからないから、試着は慎重に行うぞ」
「はい」
彩音、緊張している。

「研究室に時任も呼んでくれ。もし、鼎が拒絶した時…あいつは何するかわからないからな。4年前の改良型の仮面試着時、鼎は激しい拒絶反応起こして暴れかけただろ…。
彩音の説得でなんとか着けては貰えたが、今回は鼎に決めさせるからあいつが拒絶したらすぐ外す」


こうして鼎と時任が研究室に呼ばれる形に。鼎は見慣れないマスクに戸惑いを見せた。


「これは一体?」
鼎が呟く。

宇崎が説明する。
「鼎の素顔をベースにしたマスクだよ。これを装着すればそのまま食事も出来る。素材は柔らかいから慣れるかどうかはわからないけどな。とりあえず、試着『だけ』してみるか?」

試着ならと鼎は承諾した。


時任はかなり緊張していた。なぜなら鼎が仮面を外した姿を1度も見たことがない。
宇崎と彩音は鼎の素顔を知っているので、鼎が仮面を外す様子を見ている。時任はずっと顔を逸らしてた。


やがて仮面は外され、素顔が露になる。彩音と宇崎はてきぱきと鼎の顔にマスクを装着させている。
時任は宇崎に言われるがまま、鼎の体を優しく押さえていた。

「きりゅさん…少しだけ我慢して下さい」
「わかっている」

なんとなく鼎の声が嫌そうに聞こえた。マスクの感触が嫌なのかな…。
今までのものとは全然違うから。


柔らかい素材のマスクをなんとか鼎に装着させ終え、宇崎は手鏡を持ってきた。

「素顔ベースだとこうなるんだけど…どうだ?」
宇崎は手鏡を鼎に見せ、慎重に声を掛ける。鼎は言葉を失った。

素顔ベースなのはわかるが…これは自分であって、自分じゃない。今まで白い仮面姿で過ごしていたせいか、違和感が凄かった。


「これは…私じゃない…」

鼎はなんとか声を出し、マスクを剥がそうとするが…鼎は黒手袋を履いているため苦戦中。

「彩音、鼎のマスクを今すぐ外せ!拒絶反応起こしてる!」
彩音はなんとか鼎のマスクを剥がしていた。相手は暴れかけてるため、うまくいかない。

時任は必死に鼎を押さえながらなだめる。
「きりゅさん…お願いだから落ち着いて…。落ち着いてよ…」

時任はなぜか泣きそうになっている。見ていられなかった。


なんとかマスクを剥がし、宇崎は鼎に普段通りの白い仮面を手早く着けてあげた。
鼎はようやく落ち着いたが…泣いていた。

「あれは私じゃない…。私じゃないんだ…。すまない…しばらく1人にさせてくれ…」


鼎はそう言うと研究室を出てどこかへと姿を消した。



彩音達は「やってしまった」という状況。ああなると鼎はしばらく誰とも口を利かなくなる。
研究室に残された3人は複雑だった。時任は思わず声を漏らす。


「室長、きりゅさん過去に何かあったの…?あの拒絶反応、尋常じゃなかった…。見ていられなかったよ…。私、少し泣いちゃった…辛くて」
「鼎は4年前、今の仮面になるタイミングでの試着時にも激しい拒絶反応をしたんだ。相当嫌がっていた…。暴れかけたんだ。
彩音の説得でなんとか応じたんだけどな…」

「私達、後で謝らないとならないね。鼎のこと…わかったふりしてた」
「あやねえ…」

場が気まずい。



本部・某部屋。この部屋はほとんど使われていないため、鼎は1人になりたい時に来ることがある。


鼎は机に突っ伏して泣いていた。
彩音達は私のことを思ってやってくれたはずなのに…。ダメだった。あの姿が自分じゃない気がして。仮面姿でいる期間が長いのも関係しているのだろうか…。

人前で素顔…無理してなる必要性なんてあるのか?あの喫茶店のマスターだってそうだ。やむを得ず素顔になれない人もいる。
私は無理しているのかもしれない…。



本部・休憩所。あの元気な時任がえらい落ち込んでいた。

「あやねえ、私…きりゅさんがマスク試着していた時、兄貴とダブって見えてしまったんです」
「…いちかのお兄さんって、ゼノクにいるんだよね…」

「ゼノクスーツ姿でしばらく素顔は見てないです…。かれこれ2年くらいは兄貴の素顔…見てない。
兄貴も初め、ゼノクスーツものすごく嫌がってたのを思い出してしまって」


「それでいちか、泣きそうになっていたんだね」

「きりゅさん…複雑なんだろうな。あたし、数日前にたまたま聞いたんす。
きりゅさんは『ありきたりな日常』を望んでいることを知って。でもああいう形じゃないと思って」
「こればかりは本人じゃないとわからないよ…。私達も正解がわからないままやってきてるから…。
鼎相手は難しいからね。いちかも聞いたでしょう、鼎がなんで元老院に狙われているのか」


時任はびくびくしながら答えた。

「きりゅさん…本当は『都筑悠真』さんなんだよね?色々あって、名前を変えたというの…最近知りました。
私はきりゅさんを『紀柳院鼎』さんとしてこれからも接していきます。正体知った時は衝撃受けたけど…黙っておくよ。しぶやんも複雑そうだった」


いちかと霧人も鼎の正体、最近知ったのか…。あの戦闘後だから知らざるを得ないというか…仕方ないのか?
2人はそのままにしてくれるというから安心した。桐谷さんはその前から鼎の正体を知ってたみたいだが、素顔は知らない。

この3人は鼎の正体を知ってるけど、素顔を知らないことになる。


「あやねえ、私…きりゅさんにはいつも通りにするよ。仲間だもん。
何者であってもきりゅさんはきりゅさんだから」

「いちか、優しいんだね」



本部・司令室。宇崎は鼎に悪いことをしたと深く反省していた。
あいつ…4年前以上にひどい拒絶反応を示してた。嫌な思いをさせてしまった…。うまくマスクを外せずに苦戦している鼎は見ていて辛かった。あいつ…許さないかもしれない。


そこに鐡がどかっと入ってきた。相変わらずガラが悪い。

「おい司令、元老院に動きありだ。館で何かしてやがるぞあいつら」
「嫌な予感しかしないな…」



鼎は早めに切り上げて寮へと戻っていた。
ふと、あの喫茶店が浮かんだ。また行ってみようか…。

あのマスターに会いたい。名前すらも聞いてなかった。
鼎は1人、あの喫茶店へと向かっていた。制服姿のままで。





第34話(下)へ続く。


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